🌟ビタミンB12(VB12)欠乏が歯科領域に及ぼす影響
ビタミンB12欠乏と歯科との関係
ビタミンB12は、DNA 合成・神経機能の維持・赤血球形成に不可欠な栄養素です。
欠乏すると、全身症状だけでなく口腔内にも多くの変化が表れます。
歯科では口腔粘膜症状や神経症状として現れ、診断のきっかけになることも多いです。
① 口腔粘膜症状(もっとも重要)
- 舌炎(ハンター舌炎 / 萎縮性舌炎)
(VB12欠乏の代表的症状)
・特徴:舌乳頭が萎縮 → 平滑・つるつるした舌
・舌が赤く光沢を帯びる(beefy tongue)
・痛み、焼ける感じ(舌の灼熱感)
・味覚異常を伴うこともある
これらは鉄欠乏性貧血や葉酸欠乏でも似た症状のため、鑑別が重要です。
- 口角炎・口唇炎
・口角部の亀裂・疼痛
・乾燥や裂傷を繰り返す
・VB12単独欠乏でも起きるが、鉄欠乏と併発するケースが多い。
- 口腔内の灼熱感(Burning mouth syndrome 様)
・舌や口腔粘膜が「ヒリヒリ」する
・目に見える病変がないことも多い
・感覚神経障害による症状で、治療はVB12補充により改善することが多いです。
- 口内炎(アフタ様潰瘍)
・繰り返す小潰瘍
・細胞分裂や粘膜再生の低下が原因。
② 神経症状と歯科の関連
VB12欠乏は末梢神経障害を引き起こし、それが歯科治療の評価を難しくする症状として現れます。
- 歯痛様症状(歯は正常なのに痛い)
下顎・頬部に原因不明の痛み
→ 神経障害性疼痛の一種
→ 診断が難しく、非歯原性疼痛と誤解されやすい
(例:非典型歯痛、口腔顔面痛)
- 味覚異常
・甘味・塩味が感じにくい
・金属味
・舌乳頭萎縮と神経障害の両方が関係。
- しびれ感(舌・唇・口角)
三叉神経領域の感覚異常として出ることがある
→ 歯科での麻酔後のしびれと誤認されることも。
③ 免疫機能低下と歯周病
VB12欠乏では白血球系の機能低下が起こりやすく、結果として
・口腔感染症が治りにくい
・歯周組織の炎症が遷延しやすい
・創傷治癒が遅れる(抜歯後・手術後など)
明確な因果関係はまだ研究段階ですが、栄養欠乏の患者ではこの傾向がみられます。
④ 義歯装着患者との関連
高齢者ではVB12欠乏が多い理由(胃酸分泌低下・内因子低下・内服薬など)があるため、
・舌痛・口角炎・口内炎
がある場合、義歯不適合だけでなくVB12欠乏が背景にあることがある
→ 高齢者の口腔痛の鑑別として有用。
⑤ VB12欠乏を疑うべき歯科患者さんのサイン
以下が複数ある場合、VB12欠乏の可能性が高まります:
☞舌がつるつるで赤い(萎縮性舌炎)
☞舌の灼熱感
☞繰り返す口角炎・口内炎
☞味覚異常
☞麻酔でもないのに舌や口唇がしびれる
☞歯の検査は正常なのに痛みを訴える
☞高齢者、菜食主義、胃切除後、PPI/メトホルミン使用者
→ 歯科から内科受診(血液検査:VB12・MCV 等)を勧めるケースもあります。
⑥ 治療と歯科的改善
・VB12補充後には
・舌炎・舌痛 → 数週〜数か月で改善
・味覚異常 → 改善することが多い
・口角炎 → 数日〜数週で改善
・神経症状(歯神経症状・しびれ) → 改善に数か月かかることもあり
歯科治療単独では治らないため、全身治療(内科)との連携が重要です。


