渋谷区恵比寿の歯科医院|SHIRON DENTAL OFFICE(シロンデンタルオフィス)

インプラントをしている方が寝たきりになったら

⭐インプラントをしている方が寝たきりになったら?

インプラントを装着している方が寝たきりになり、自分で口腔清掃ができなくなった場合に生じるリスクとその対処方法を、臨床的観点・介護現場での実際の問題・医学的リスクの3方向から解説します。

■ インプラントがある寝たきり患者さんに起こりやすい主なリスク

① インプラント周囲炎が急速に進行する

寝たきりで清掃が不十分になると、インプラント周囲に汚れ・バイオフィルムが蓄積しやすく、周囲炎が急速に悪化します。

● インプラント周囲炎の特徴

👉インプラントは天然歯と違い、歯根膜がないため炎症が広がると骨破壊がスピード早い

・周囲炎が重度になるとインプラントが早期に脱落する

・痛みを感じにくい場合があり、発見が遅れる

● 寝たきりの方で進行が早い理由

・ブラッシングが不十分になりプラーク付着が増大

・唾液量低下(脱水・薬剤・口呼吸)

・介助者がインプラント部分の清掃に慣れていない

■② インプラント周囲の清掃が困難になる(介助者にとって)

寝たきりの患者さんでは、介助者が口腔内の状態を十分に確認できないため、次の状態が起こりやすくなります。

● 清掃困難の具体例

☞口を大きく開けられない

☞頬粘膜・舌の筋緊張によりブラシが届かない

☞インプラント周囲の清掃には専用ブラシや細かな操作が必要だが、介助者には難しい

☞義歯を併用していると装着状態のままになり、清掃不良が増悪

その結果、プラーク滞留 → 周囲炎 → 膿瘤形成 → 腫脹が起きやすい。

■③ 誤嚥性肺炎のリスク増加(特にインプラント周囲炎がある場合)

インプラント周囲炎の細菌は、口腔内の嫌気性菌が多く、誤嚥性肺炎の原因菌と同じことが多いです。

● 寝たきりでリスクが上がる理由

☞口腔内の細菌数が大幅に増える

☞喉頭反射の低下で唾液を誤嚥しやすい

☞体位変換が少なく、口腔残渣の停滞が長い

特にインプラント周囲炎があると、周囲から出る滲出液(膿)が細菌の塊となるため、肺炎のリスクがさらに高まります。

■④ インプラント体の破損・脱落によるトラブル

清掃できないまま周囲炎が進行すると、以下のような問題が起こり得ます。

● 起きやすいトラブル

☞インプラントの動揺

☞上部構造(被せ物)が破折・脱離

☞スクリュー緩みによるトラブル

☞義歯に組み込まれているインプラントロケーターの破損

☞寝たきりでは頻回の歯科受診が難しく、小さな異常が長期間放置されるため重症化しやすい。

■⑤ 口臭・疼痛・膿による生活の質の低下

インプラント周囲炎が起こると、

●強い口臭

●歯ぐきの腫脹

●排膿

●咀嚼時痛

が生じやすく、本人が訴える能力が低い場合には発見が遅れ、生活の質(QOL)が大幅に低下します。

■⑥ ケアマネ・介助者・医療スタッフの負担増加

インプラントの管理は、天然歯より難易度が高いため、介護現場では以下が問題になります。

● 問題点

☞介護スタッフがインプラント構造を理解できていない

☞上部構造が外れた時に対処できない

☞清掃方法の教育が必要

☞トラブル時、訪問歯科への手配が必須になる

つまり、適切なマネジメント体制がないと放置されるリスクが高くなる。

■⑦ 経済的リスク(長期的視点)

寝たきりになると、歯科訪問診療や修理が必要になることが増え、その結果

☞定期的な訪問歯科の費用

☞インプラント周囲炎治療費

☞上部構造の修理・再製の費用

☞インプラント撤去が必要になった場合の費用

など、メンテナンス費用が増大しやすい。

■ まとめ:インプラントがある寝たきりの方に特に重要な対策

◆ 寝たきりになったら必須の対応

  1. 訪問歯科による定期管理(月1回〜2回)
  2. 介助者へのブラッシング・インプラント清掃指導
  3. 義歯併用者は毎日の取り外し清掃の徹底
  4. 口腔機能低下(嚥下反射・咳反射)のチェック
  5. 周囲炎兆候(腫れ・膿・動揺)の早期発見

◆ インプラントだからこそこうしたい

☞天然歯以上にプラーク除去が重要

☞トラブルの自覚症状が少ないため、外部の管理が必要

⭐寝たきりで自力の口腔管理ができないインプラント装着者に、インプラント周囲炎など深刻なトラブルが発生した場合の実際的で専門的な対応について整理します。

① 状態評価(初期対応)

まずは 訪問歯科診療による評価 が必須です。

【評価内容】

☞インプラント部の視診・触診

☞排膿、腫脹、発赤、動揺の程度

☞プロービング

☞出血・膿の有無、深さ(骨レベルの推定)

☞動揺度

☞インプラントが機能不全かどうかの判断に直結

☞痛みの有無(本人が訴えられない場合は介護者の観察情報が必須)

☞口腔清掃状況(プラーク、舌苔、義歯併用の有無)

☞全身状態の確認

☞誤嚥リスク、嚥下機能、栄養状態、介護度

☞強い感染が場合は誤嚥性肺炎のリスク増大

② 炎症の進行度で変わる対応

▶ 軽度(インプラント周囲粘膜炎:Peri-mucositis)

目的:可逆的な段階で炎症を止める

対応

プラーク徹底除去

家庭での介護者による清掃指導

ガーゼ・スポンジブラシでの清掃

口腔保湿剤併用

訪問歯科での

☞バイオフィルム除去(インプラントを傷つけないようなチタン対応器具)

☞軽度のデブライドメント

☞抗菌薬の局所投与

☞CHX(クロルヘキシジン)ジェル

★☞清掃が困難でリスク高い場合
→ インプラント上部構造(被せ物)の取り外しも検討(清掃しやすくするため)

▶ 中等度〜重度(インプラント周囲炎:Peri-implantitis)

目的:感染制御と痛み・腫れの軽減

基本対応

☞デブライドメント

チタン/ジルコニア表面を傷つけない器具でバイオフィルム除去

必要に応じてエアフロー(粉体)やレーザー(Er:YAG)

☞感染抑制

☞局所 CHX

☞紅斑・腫脹・排膿があれば 抗生剤(全身投与)

咀嚼機能の低下がある場合
→ 上部構造の一時的撤去

【寝たきり患者さん特有のポイント】

☞強い腫れや排膿は 誤嚥性肺炎へ直結

☞食事中の痛みにより 栄養低下 → 免疫低下 → 炎症悪化という悪循環

☞痛みを訴えにくく、悪化に気づきにくい

→早期治療が特に重要。

▶ 末期(骨吸収が高度・インプラント動揺あり)

目的:感染源の除去と全身リスクの軽減

対応

👉インプラントの撤去(抜去)

☞上部構造も同時に撤去

局所麻酔で比較的短時間で可能
(寝たきりの方でも訪問歯科で対応できるケース多い)

抜去後は

☞創部洗浄

☞必要に応じて抗生剤投与

☞義歯を使用していた場合は調整・再作製

★撤去の判断基準

1)インプラントの明らかな動揺

2)排膿が続く

3)清掃が困難で再発を繰り返す

4)栄養・全身状態への悪影響が強い

5)本人の介護レベル的に維持管理ができない

→ 寝たきりの方では、早めの撤去が全身管理上メリットとなる場合が多い。

③ 清掃管理(介護者・家族と一緒に)

基本は “とにかくプラークを溜めないこと”

☞ガーゼ清拭

☞スポンジブラシ(吸引併用可)

☞口腔保湿剤(乾燥すると細菌数が急増)

☞毎日の舌清掃

☞よく噛めない場合でも可能な範囲で咀嚼刺激を確保
→ 唾液分泌アップで細菌数減少

【訪問歯科の定期管理】

2〜4週ごとが理想
(周囲炎の既往がある場合は2週が目安)

④ 全身面の注意(寝たきり患者に特有)

☞口腔内感染は誤嚥性肺炎を誘発

炎症による痛み → 食事量低下 → 栄養不良 → 免疫低下 → 感染悪化

☞糖尿病・低栄養・脱水により治療効果が低下

→ インプラント周囲炎は 全身管理の問題として扱うべき。

⑤ 最終目標:機能よりも安全性を優先

★寝たきり・要介護高齢者の場合、 「インプラントを残すこと」より「感染源を減らすこと」が全身の安全に直結します。

無理にインプラントを残すと
→ 周囲炎の慢性化
→ 誤嚥性肺炎
→ 栄養低下
→ 臥床時間の増加
という悪循環を招きます。

そのため
👉重度なら積極的に撤去、軽度〜中等度なら徹底した感染管理
というのが臨床的に妥当な方針です。

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