⭐ハンター舌炎(Hunter glossitis)と歯科との関係
ハンター舌炎(Hunter glossitis)と歯科との関係は非常に深く、歯科が最初に異常に気づくことが多い全身疾患のサインの一つです。
- ハンター舌炎とは
ハンター舌炎は、主に
👉 ビタミンB12欠乏(多くは悪性貧血)によって起こる萎縮性舌炎です。
主な原因
ビタミンB12欠乏
悪性貧血(内因子欠乏)
胃切除後
萎縮性胃炎
長期のPPI使用
高齢者の吸収不全
まれに葉酸欠乏でも類似症状
- 典型的な舌・口腔内所見(歯科的特徴)
歯科医師が最初に気づくことが多い理由は、視診で分かりやすい特徴的変化があるためです。
【舌の所見】
☞舌乳頭の萎縮・消失
☞平滑で赤い舌(いわゆる赤いツルツルの舌)
☞光沢のある舌面
☞舌痛、灼熱感(ヒリヒリ・ピリピリ)
【自覚症状】
☞辛いものがしみる
☞舌が痛くて食事がつらい
☞味覚異常
☞口腔乾燥感
👉 見た目の変化+痛みがセットで現れるのが特徴です。
- なぜ歯科と関係が深いのか
① 口腔症状が「全身症状より先」に出る
☞貧血症状(倦怠感・息切れ)や
☞神経症状(しびれ・ふらつき)
よりも先に、
👉 舌の異常・口内のヒリヒリ感として現れることが多い。
そのため、
歯科が最初の発見者になるケースが少なくありません。
② 口腔粘膜のターンオーバーが速い
☞舌・口腔粘膜は細胞分裂が活発
☞DNA合成に必須のB12が不足すると
→ 真っ先に障害が出る
👉 これはDOHaDや栄養歯科学とも共通する重要な視点です。
③ 鑑別が必要な疾患が多い
歯科では次の疾患と見た目が似るため、鑑別力が重要です。
【鑑別疾患 違い】
●地図状舌 形が変化する、痛みが軽い
●カンジダ性舌炎 白苔あり、擦ると取れる
●鉄欠乏性舌炎 口角炎・爪異常を伴いやすい
●扁平苔癬 網状白斑が特徴
●舌癌初期 硬結・治らない潰瘍
- 歯科で重要な問診ポイント
☞ハンター舌炎が疑われる場合、歯科問診が極めて重要です。
☞必ず聞きたいこと
●最近、疲れやすい・息切れ
●手足のしびれ・ふらつき
●胃の病気・胃切除歴
●長期の胃薬(PPI)使用
●高齢・偏食・菜食中心
●過去に貧血を指摘されたことがあるか
👉 これらが揃えば、歯科から医科への紹介が必須です。
- 歯科の対応と役割
① 医科への適切な紹介
内科・血液内科へ
「舌乳頭萎縮を伴う舌炎」「B12欠乏疑い」と明記
👉 早期紹介が不可逆的な神経障害を防ぐ鍵になります。
② 口腔内の対症療法(補助的)
※ 根本治療はB12補充です。
☞刺激物の回避指導
☞口腔清掃の徹底(痛みがあっても可能な範囲で)
☞保湿剤の使用
☞義歯や補綴物の不適合があれば調整
③ 治療経過の観察
B12補充開始後
→ 舌の痛みは比較的早期に改善
舌乳頭の回復は数週〜数か月
👉 歯科での視診が、治療効果の指標になります。
- 放置した場合のリスク
☞舌痛の慢性化
☞摂食障害・低栄養
☞味覚障害
☞末梢神経障害(回復しにくい)
☞認知機能低下との関連も指摘
👉 「舌が赤いだけ」と軽視するのは危険です。
- 歯科医療者へのメッセージ
ハンター舌炎は
☞歯科が全身疾患を救える代表的な疾患
です。
●☞舌を見る
●☞痛みを軽視しない
●☞栄養・全身状態を考える
これができる歯科医院は、
真の予防医療・口腔から全身を守る医療を担っています。


