🌟歯周病に深く強く関わるP.G菌とは?
歯周病に関わる主要な細菌の一つである「P.G.菌」は、「ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)」の略で、非常に病原性の高い菌として知られています。
この菌は、他のいくつかの菌(T.f菌やT.d菌など)と合わせてレッドコンプレックスと呼ばれ、歯周病の進行に深く関わる「キーストーン病原体(Keystone pathogen)」と考えられています。
🦠 P.G.菌の主な特徴と歯周病を悪化させる仕組み
P.G.菌が歯周組織を破壊し、歯周病を進行させる主なメカニズムは以下の通りです。
嫌気性菌としての定着
酸素を嫌う「偏性嫌気性菌」であり、酸素が少ない深い歯周ポケットを好んで生息・増殖します。
他の菌と一緒にバイオフィルム(歯垢)を形成し、抗菌剤や免疫細胞から身を守ります。
強力な毒素の放出
ジンジパイン(Gingipain):非常に強力なタンパク質分解酵素で、歯茎や歯槽骨の主成分であるコラーゲン線維を分解し、歯周組織を直接破壊します。
LPS(リポ多糖):菌体の外膜にある内毒素で、強い炎症反応を引き起こします。
P.G.菌はタンパク質や鉄分を栄養源として利用するため、ジンジパインで組織を分解し、出血を促すことで血中の鉄分を取り込み、さらに増殖します。
免疫システムの攪乱と骨破壊
P.G.菌は、私たちの免疫細胞の働きを抑制したり、逆に過剰な慢性炎症を引き起こすことで、体が本来持つ防御機能を弱めます。
この慢性炎症の結果、歯を支える歯槽骨が徐々に吸収・破壊されていき、最終的には歯がぐらつき、抜け落ちる原因となります。
🚨 全身の健康への影響
P.G.菌は口腔内だけでなく、血管を通じて全身に広がり、様々な全身疾患との関連が指摘されています。
○アルツハイマー病:P.G.菌やその毒素が脳に到達し、アルツハイマー病の原因とされるアミロイドβの蓄積を促進することが示唆されています。
○動脈硬化・心疾患:血管内に侵入したP.G.菌が血管の修復を妨げたり、血管内プラークの形成に関わり、動脈硬化を進行させる可能性があります。
○関節リウマチ:P.G.菌が産生する酵素(PAD)が自己免疫反応を誘導し、関節の炎症を悪化させる可能性が指摘されています。
糖尿病:歯周病による炎症がインスリンの働きを妨げ、糖尿病を悪化させ、また逆に糖尿病が歯周病を悪化させるという相互関係があります。
歯周病は「サイレントディジーズ(静かなる病気)」とも呼ばれ、初期には自覚症状が少ないまま進行するため、P.G.菌が増殖しやすい歯周ポケットの深さや出血の有無を定期的にチェックすることが重要です。
P.G.菌の増殖を抑えるためには、毎日の適切なブラッシングによるバイオフィルムの破壊と、歯科医院での定期的な専門的ケア(歯石除去など)が不可欠です。


