渋谷区恵比寿の歯科医院|SHIRON DENTAL OFFICE(シロンデンタルオフィス)

現在の歯周治療の到達点ペリオドンタル・デブライドメント

✡️現在の歯周治療の到達点「ペリオドンタル・デブライドメント」について

ペリオドンタル・デブライドメント ― 現代歯周治療の中核概念―

1.歯周治療概念のパラダイムシフト

近年、歯周治療の概念は大きな転換期を迎えている。かつて歯周治療の中心はスケーリング・ルートプレーニング(SRP)であり、歯根面に付着した歯石や感染セメント質を「徹底的に除去し、滑沢化すること」が治療の本質と考えられてきた。

しかし現在では、
歯周病は“歯の病気”ではなく、細菌叢の破綻(ディスバイオーシス)による炎症性疾患である
という考えが主流となり、それに伴い治療の主役は
「歯を削る処置」から「感染源を除去する処置」へ
と大きくシフトしている。
その中心に位置づけられているのが
ペリオドンタル・デブライドメント(Periodontal Debridement)である。

2.歯周デブライドメントとは何か

ペリオドンタル・デブライドメントとは、
歯周ポケット内に存在する細菌性プラーク、歯石、細菌バイオフィルム、炎症性・感染性組織を、意図的なセメント質除去を行わずに、非外科的かつ低侵襲に除去・破壊する治療概念である。

その目的は、
☞健康なセメント質を保存する
☞歯周組織の治癒能力を最大限に引き出す
☞歯周環境を生体が許容できる状態に再構築する
☞歯周炎の進行を抑制・消退させる
ことであり、現代歯周治療の基本であり中核をなす。

3.なぜデブライドメントが必要なのか

歯周病の本質は、
歯と歯肉の間に形成された細菌バイオフィルムによる慢性炎症である。
歯ブラシでは到達できない歯周ポケット深部では、
プラークが成熟し
歯石として固着し
病原性の高い細菌叢(ディスバイオーシス)が形成され
この状態が持続すると、
☞歯肉の炎症
☞アタッチメントロス
☞歯槽骨吸収
が進行し、最終的には歯の喪失に至る。

したがって歯周病治療においては、
原因であるバイオフィルムを物理的に破壊・除去しなければ治癒は起こらない。
この原則に立脚した治療が、ペリオドンタル・デブライドメントである。

4.ディスバイオーシスと歯周炎

近年の研究により、
正常な細菌叢が病原性の高い細菌叢へ変化する「ディスバイオーシス(dysbiosis)」が、多くの慢性炎症性疾患の引き金になることが明らかになっている。
歯周炎においても同様に、
細菌そのものの存在量より
細菌叢の「質的変化」
が炎症の持続・更新に深く関与していることが注目されている。
重要なのは、

👉細菌や歯石を「完全に除去」しなくても、炎症状態が改善するという事実である。

実際、
根面を強く削らず
優しく擦り洗いするだけで
内毒素(LPS)の約99%が除去可能
であることが報告されており、
過度なルートプレーニング(オーバートリートメント)は、
必ずしも治癒に必要ではないことが示されている。

5.従来のSRPとの本質的違い

項目
【目的】
SRP               歯石除去・根面滑沢化
ペリオドンタル・デブライドメント 感染源の除去・破壊

【アプローチ】
SRP               機械的に削る        
ペリオドンタル・デブライドメント 低侵襲・優しい除去

【歯質への考え方】
SRP               セメント質も除去
ペリオドンタル・デブライドメント セメント質を保存

【治療哲学】
SRP               歯を整える
ペリオドンタル・デブライドメント 環境を整える

現在では、
ルートプレーニングの意義は、かつて考えられていたほど大きくないとされており、
再評価後に治癒が不十分な部位に対してのみ、選択的・限定的に行うべき処置と考えられている。

6.歯周基本治療(歯肉縁下インスツルメンテーション)の現実的ゴール

ペリオドンタル・デブライドメントにおける現実的かつ科学的なゴールは、
歯根表面にとどめて処置を行い
深部への予防拡大は行わず
生体が許容できるレベルまで細菌性プラーク・歯石を減少させ
炎症が改善する環境を獲得する
ことである。

具体的な治療目標は、
歯周ポケット4mm以下への改善(ポケット閉鎖)である。

文献的には、
4mm以上のポケットは
平均で約70%の深さまで改善
することが示されており、
4mm以下の歯周ポケットは、その後の歯の喪失リスクを大幅に低減する。

つまり、
メインテナンス可能な歯周環境を獲得すること
こそが歯周基本治療の本質である。

7.使用される器具とその役割

ペリオドンタル・デブライドメントでは、
☞超音波スケーラー
☞手用スケーラー
☞エアフロー(パウダーデブライドメント)
☞レーザー(補助的)
などが使用され、単独ではなく併用が推奨される。

特に超音波スケーラーは、
バイオフィルム破壊能力が高い
深いポケットに到達しやすい
治療時間を短縮し、患者負担を軽減という点で重要な役割を果たす。

一方、手用スケーラーは
触知感覚が必要な精密部位において不可欠である。

8.喫煙と治療成績

歯周ポケットの閉鎖率は、
非喫煙者 > 喫煙者
であることが明確に示されている。
喫煙は血流障害や免疫応答低下を引き起こし、
歯周治療の治癒反応を著しく阻害するため、
禁煙指導は治療の一環として極めて重要である。

9.治療後とメインテナンス(SPT)

ペリオドンタル・デブライドメントは、
治療のゴールではなくスタートである。
処置後に、
☞正しいブラッシング
☞歯間清掃
☞定期的なSPT(歯周病安定期治療)
が行われなければ、歯周病は再発する。
特に高齢者や全身疾患を有する患者においては、
誤嚥性肺炎予防や全身炎症軽減の観点からも、
デブライドメントと継続管理の意義は極めて大きい。

10.結論 ― ペリオドンタル・デブライドメントの本質

ペリオドンタル・デブライドメントの本質は、
歯を削る治療ではない
感染源を除去する治療である
歯周組織の治癒能力を引き出す治療である
という点に集約される。

それは、
最小侵襲で最大の治療効果を得るという現代歯周治療の理念そのものであり、
歯を長く、機能的に、健康に保つための最も重要な基盤治療である。

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