歯科用金属アレルギーについて
ピアスやリングで皮膚に湿疹がでる方もおられると思います。
金属の種類によってもアレルギーでる方でない方がいらっしゃいます。
歯科治療の結果、皆さんのお口の中に金属が使用されている場合、その金属は接触皮膚炎の原因物質となる場合があります。
接触皮膚炎は、①刺激性接触皮膚炎、②アレルギー性接触皮膚炎、③光接触皮膚炎、④全身性接触皮膚炎・接触皮膚炎症候群に分類されます。
ピアスやリングなどアクセサリーによる金属アレルギーは金属が直接触れている皮膚を中心に湿疹を生じることが多く、アレルギー性接触皮膚炎に分類されます。
一方、歯科用金属アレルギーでは、お口の中に症状が出ることは稀で、通常お口から離れた皮膚に症状が出るため全身性接触皮膚炎に分類されます。
歯科用金属アレルギーの発症機序はまだ十分に解明されておりませんが、お口の中の金属が腐食によりイオン化が起こると体内のタンパク質と結合してハㇷ゚テンを形成して、これがお口の粘膜や消化管から体の中に吸収されて血液により全身に運ばれ、抗原となってアレルギー反応の結果、皮膚症状が生じると考えられております。
比較的多い症状は、湿疹、扁平苔癬、乾癬、紅皮症などです。
金属アレルギーの診断は、パッチテストまたはリンパ球幼若化試験により行われます。
パッチテストの感度は70~80%程とされており、そのため多くの擬陽性、偽陰性の判定が出る可能性があり確定とはなりにくい状況です。
また、患者さんの体や皮膚の状態、貼付する物質の濃度、検査者の技術差などによって結果がばらつく可能性があります。
貼付した抗原により新しい感作を引き起こしたり、水疱形成など強い皮膚症状を引き起こす可能性もあります。
他方のリンパ球幼若化試験は、採血以外に患者さんに負担を与えることはありませんが、パッチテストと比較して診断精度に優れているわけではありません。
そのため、金属アレルギーの確定診断法は現在においても確立した精度の高いものはなく、両検査法の特性をよく理解したうえで慎重に診断が下されなければなりません。
日本接触皮膚炎学会によると、金属アレルギーを起こす頻度の高い金属は、コバルト、ニッケル、クロム、水銀の順であると報告されており、歯科用金属にはこれらの金属が含まれている場合も多く、歯科用金属により引き起こされる接触性皮膚炎も多いと考えられます。
また、従来から比較的安全とされてきた高カラットの金合金だけでなく、金属アレルギー患者に唯一使用できると思われていたチタンについても金属アレルギーの症状を訴える患者さんが出現しており、確実に安全な歯科用金属は存在しなくなっています。
これらのことから、歯科用金属アレルギーの患者さんの治療には、検査によって判明したアレルギーを引き起こす可能性のある金属をすべて取り去ることが基本となります。
その後、症状の消退を確認してから金属に代わる材料で治すことになります。
その材料の代表がコンポジットレジンとセラミックとなります。
コンポジットレジンとセラミックによる治療は、金属アレルギーを回避する意味で非常にメリットのある治療となります。