⭐結論から言うと、歯石そのものが直接「炎症を引き起こす毒素」になるわけではありません。
しかし、歯石は歯周病を悪化させる「温床」となるため、臨床的には非常に重要な因子とされています。
🔹 歯石の正体
- 歯石は、プラーク(細菌の塊)が唾液中のカルシウムやリン酸によって石灰化したものです。
- 成分の大部分は「無機質(カルシウム塩)」で、石そのものには病原性はありません。
🔹 なぜ歯石が歯周病を悪化させるのか?
- 表面がザラザラしているためプラークが付きやすい
→ 歯石があると、その上に新しい細菌が付着しやすく、清掃が難しくなります。 - 歯肉縁下(歯ぐきの中)の歯石は細菌の温床になる
→ 特に歯周ポケット内の歯石は、酸素が少ない環境を作り出し、歯周病原菌(Porphyromonas gingivalis など)が繁殖しやすくなります。 - 歯石があると炎症が慢性化しやすい
→ 歯石自体は「炎症の原因」ではなくても、除去されない限りプラークコントロールが不可能に近くなり、結果的に炎症が進行します。
🔹 最新の知見
- 最近の研究では、「歯石そのものは無菌的」だが「歯石表面や内部に細菌の死骸や毒素が取り込まれている」ことが確認されています。
- 特に歯肉縁下歯石は細菌バイオフィルムのリザーバー(貯蔵庫)のような役割を果たし、歯周病治療では必ず除去すべきターゲットとされています。
✅ まとめ
- 歯石自体は毒ではない
- しかし、プラーク付着の温床になり、細菌の貯蔵庫となることで歯周病を悪化させる
- そのため、歯石除去(スケーリング・ルートプレーニング)は歯周病治療の基本であり、必須であるが、その際、根面のダメージを極力少なくすることが極めて重要です