渋谷区恵比寿の歯科医院|SHIRON DENTAL OFFICE(シロンデンタルオフィス)

根管充填においてなぜ MTAシーラーが優れているのか

⭐歯科治療で使う MTAが優れている理由とは

MTA(Mineral Trioxide Aggregate) は、1990年代にTorabinejadらにより開発された、生体親和性と封鎖性に非常に優れた歯科用材料で、主に歯内療法領域で使用されています。

主成分はセメント系(ポルトランドセメント類似)で、化学的に安定し、硬化後は水和反応による高いアルカリ性(pH約12.5)を示すため、抗菌性や生体活性を発揮します。

  1. MTAの主成分と化学的特徴
    主成分
    三酸化鉱物(Tricalcium Silicate, Dicalcium Silicate)
    三酸化カルシウム
    Silicone oxide
    Bismuth oxide(造影剤)※近年はタンタル酸塩など別の造影剤を用いる製品もあり、変色リスクが減少
    硬化機序:水和反応
    Ca(OH)₂(高アルカリ)を放出 → 抗菌作用
    水と反応するため湿潤環境で硬化しやすい(血液・体液環境でも使用可)
    硬化時間 従来型:2〜4時間
    速硬性タイプ(高拡散性MTA・Fast set MTA):数分~60分程度
  2. MTAの生体学的特性(最大の特徴)
    ✔ 高い生体親和性
    歯髄・根尖組織に対して刺激が少なく、治癒を促進。

✔ 抗菌作用
pH12.5の強アルカリにより嫌気性菌に強い抗菌性。

✔ 封鎖性が非常に高い
マイクロリーケージを極めて低く抑える → 成功率の向上に寄与。

✔ 硬組織誘導(バイオアクティビティ)
歯髄細胞・骨芽細胞を刺激 → セメント質・石灰化組織形成を誘導
→ 直接覆髄・根尖形成に非常に有効

✔ 湿潤環境でも使用可能
血液汚染に強い点は従来のCa(OH)₂の大きな弱点の克服。

  1. MTAの臨床での主な使用場面

(1) 直接覆髄(Direct pulp capping)
露髄した歯髄を保護し、生活歯髄を保存
高い治癒率(80〜95%報告)、石灰化ブリッジの形成が極めて良好

(2) 歯髄部分断髄(Partial pulpotomy / Cvek pulpotomy)
若年永久歯の外傷で必須
歯髄の生存率を高く維持

(3) 穿孔部封鎖(Perforation repair)
側方穿孔、根分岐部穿孔、根尖孔付近など
MTAは封鎖性・生体活性に優れ、穿孔修復のゴールドスタンダード

(4) 逆根管充填 Retrograde Filling(外科的歯内療法)
根尖切除後の逆根管にMTA充塡
高い成功率(90%以上報告多数)

(5) 根尖形成術(Apexification)
未完成歯での根尖形成に使用
Ca(OH)₂より治療期間が大幅に短縮(即日で根尖バリア形成可能)

(6) 根管内貼薬・仮封(稀だが応用あり)
根管内の仮封や穿通時の封鎖
歯根破折の予防的封鎖など

  1. MTAのメリット
    硬組織形成能(石灰化促進)
    封鎖性が非常に高い
    抗菌性
    湿潤環境でも硬化
    生体親和性が抜群に高い
    成功率の高い治療が可能
    → 歯髄温存療法・外科的歯内療法で最も信頼性の高い材料
  2. MTAのデメリット(臨床上の注意点)
    ❌ 変色のリスク(特に前歯)
    Bismuth oxideが原因(光照射で黒変)
    → 現在は変色リスクの低い白色系MTAや高純度タイプが登場

❌ 扱いにくい(粘稠性・流動性)
混和比・湿度により操作性が難しい
トロッとした質感でコントロールが必要

❌ コストが高い
1症例で数千円〜数万円の材料費(医院負担が大きい)

❌ 硬化に時間がかかる場合がある
従来型MTAは硬化4時間程度
→ Fast setタイプで解決傾向

❌ 金属系造影剤によるアーチファクト
CT撮影で白飛びや影が出ることがある

  1. MTAと従来材料の比較
    材料封鎖性 生体親和性 抗菌性   硬組織形成能  操作性
    Ca(OH)₂    中      中    高      中〜高      良
    グラスアイオノマー 中    中    低      ほぼなし     良
    MTA    非常に高い  非常に高い  高      最高     やや難
    Bioceramic系非常に高い 非常に高い  高      高    かなり良
    (MTA後継)
  2. MTAとバイオセラミック(Bioceramic)材料の違い

MTAの後継材料として登場したBC材(Biodentine、TotalFill BC、NeoMTAなど)は:


操作性が改善
速硬化
変色しにくい
流動性や浸透性が高い
=MTAの弱点を克服しつつ、長所を引き継いだ材料

多くの臨床医が MTA → Bioceramic へ移行しつつあります。

  1. MTA使用に関するエビデンス(成功率)

● 直接覆髄の成功率
MTA:80〜95%
Ca(OH)₂:60〜75%

● 穿孔修復の成功率
MTA:81〜92%
※深刻な穿孔では成功率が低下

● 逆根管充填の成功率
MTAで90%前後
→ 歯根端切除術の標準材料
● Apexification(根尖形成)成功率
MTAで90%〜
Ca(OH)₂より治療期間が著しく短い

  1. よく使われるMTA製品例(日本)
    ProRoot MTA(Dentsply)
    古典的・エビデンス豊富

Endocem MTA(Maruchi)
速硬化型、変色少ない

RetroMTA
バイオセラミックに近く変色少ない

Biodentine(septodont)※MTAではないが後継的存在
硬化性・扱いやすさが向上

まとめ

MTAは「歯髄を守り、歯を抜かずに済ませるための革命的な材料」 といえます。

生体親和性◎
抗菌性◎
封鎖性◎
石灰化誘導◎
特に
歯髄温存療法・穿孔修復・逆根管充填・根尖形成
で高い成功率を示します。

ただし
操作性の難しさ
変色
コスト
といった課題もあり、近年はバイオセラミック材料への移行が進んでいます。

根管充填における 「MTA」はなぜ使われるのか?

通常の根管充填は
→ ガッタパーチャ(GP)+シーラー(側方加圧・垂直加圧)が標準ですが、
特定の状況では MTA単独またはMTA主体で根管充填を行う ことで、従来法より高い成功率が得られる場合があります。

理由は、MTAには以下の強みがあるためです:

細菌封鎖性が非常に高い
生体活性(硬組織誘導)がある
根尖部でのバリア形成に優れる
湿潤環境でも硬化しやすい

■ 1. MTA根管充填が特に有効なケース
① 根尖が開大した歯(Immature apex / Open apex)
通常のGP充填では根尖から材料が漏れるため困難。

● MTAは根尖で“硬いバリア(apical plug)”を形成できる
→ これが最も代表的な使用用途。

【利点】
① visit で根尖閉鎖が可能(one-visit apexification)
従来の Ca(OH)₂ 法のように数ヶ月〜1年必要なし
セメント質の形成が促進
治癒率90%以上の報告多数

② 根尖に穿孔・外傷・処置ミスで欠損があるケース
MTAは欠損部位の“穴埋め”と“硬組織誘導”に優れる。
破壊された根尖形態でもMTAで形態回復が可能
封鎖性が高く、細菌侵入をブロック
CTで術後の骨再生が確認されることが多い

③ インターナルリゾープションや穿通(Perforating internal resorption)
内部吸収部は湾状で、GPでは封鎖困難。

● MTAは“欠損部を埋める材料”として最も優秀

操作性(ペースト状)がこのような不規則形態に適合
周囲にセメント質を形成しながら治癒
再発率が低い

④ 根尖外科後の逆根管充填(Retrograde filling)

これは「根管充填」というより“逆方向からの根管充填”。
MTAが最も多く使用される分野

封鎖性・硬組織誘導ともトップレベル
現代の外科的歯内療法のゴールドスタンダード
成功率:90%前後と非常に高い。

⑤ 根尖側の交通(パテントアペックス)でGPが押し出されやすいケース

根尖部のコントロールがGPでは難しい
MTAを根尖5mmほどをプラグとして作成
→ その後にGPで充填する「MTA apical plug + GP法」も一般的

■ 3. MTA根管充填の利点

✔ 根尖断面からの細菌侵入を強固にブロック
→ 成功率が高い

✔ 生体活性によりリゾープション後の硬組織形成が促進
→ X線で骨充填が早く進行する

✔ 湿潤環境で硬化
→ 根尖が開放している症例でも使いやすい

✔ バリア形成(apical plug)が確実
→ GPではできないことが可能

■ 4. MTA根管充填のデメリットと注意点

❌ 変色リスク
前歯部では注意。変色しにくいMTAを選ぶ。

❌ 操作性の難しさ
粘性があり、押さえ込みにコツが必要
超音波で柔らかく整える場面もある

❌ 高価
医院コストは高く、保険適用外が多い。

❌ 曝露血液が多いと硬化が不安定になることがある
→ 止血、乾燥のコントロールが鍵

■ 5. MTA根管充填のエビデンス(成功率)

– Open apex(根尖バリア形成)
 → 成功率 85〜95%

– 穿孔修復後のMTA根管充填
 → 成功率 80〜92%
– 逆根管充填(根尖外科後)
 → 90〜94%
– インターナルリゾープション充填
 → 治癒率 80〜90%

総じて
“GPでは治療困難な症例”での成功率を劇的に高める材料
であることがわかります。

■ 6. MTA根管充填が特に効果を発揮する症例まとめ

🔶 根尖開大歯(Open apex)
🔶 根尖穿孔
🔶 インターナルリゾープション
🔶 パーフォレーション
🔶 根尖外科の逆根管充填
🔶 根尖コントロールが困難な根管形態
🔶 GPが押し出されやすいケース
🔶 歯を長期保存したい戦略的歯

■ 総括:根管充填におけるMTAの立ち位置

根管充填の標準材料はGP(ガッタパーチャポイント)ですが、
「GPが使えない・GPでは封鎖性が不十分になりやすい」
という症例において、MTAは圧倒的な力を発揮します。

つまり、

⭐ MTAは難症例の根管充填を成功に導くための決定版材料
⭐ 特に根尖管理が難しい症例でGP(ガッタパーチャポイント)より優れている

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