🌠歯科治療と音楽の関係について
主に以下の2つの側面から考えることができます。
- 治療中の音楽の利用(患者さんの心理的・生理的影響)
歯科治療中に音楽を聴くことは、患者さんの不安や痛みを軽減し、リラックス効果をもたらすために広く活用されています。
🎶 音楽がもたらす主な効果
☞不安・恐怖心の軽減とリラックス効果
多くの患者さんが歯科治療に対して感じる緊張やストレスを和らげます。
音楽を聴くことで、自律神経のバランスを整え、リラックス時に優位になる副交感神経の働きを促す作用があります。
特に、患者さん自身が選んだお気に入りの音楽は、不安や心拍数、ストレス反応をより効果的に低下させることが研究で示されています。
☞不快な音のマスキング
ドリルや吸引器などの不快な治療音を遮断し、患者さんの注意を分散させる役割を果たします。
☞鎮痛効果の可能性
音楽を聴くことにより、「聴覚性痛覚消失」という現象が起き、身体的な苦痛を和らげる効果があるという報告があります。
また、脳内でβ-エンドルフィン(内在性の鎮痛薬で多幸感をもたらす)、ドーパミン、セロトニンといった神経伝達物質の分泌が促進され、痛みの感じ方を弱めることにつながります。
☞麻酔効果の向上
リラックスすることで、麻酔の効きが良くなる可能性が指摘されています。
多くの歯科医院では、クラシック音楽や歌のないイージーリスニングなどをBGMとして流すことで、患者さんに心地よい環境を提供しています。
- 音楽家(特に管楽器奏者)の口腔内のケアと治療
音楽活動、特に管楽器の演奏は、歯、口唇、顎関節に大きな影響を与えるため、歯科治療との関係が非常に密接です。
🎺 楽器演奏による影響
管楽器(サックス、トランペットなど):
演奏時に前歯と唇でマウスピースを強く押さえつける(アンブシュア)ため、歯や口唇に強い圧力がかかります。
歯の形態(特に前歯)が変わると、空気の流れが変わってしまい、演奏のクオリティに支障をきたすことがあります。
不正咬合(歯並びの乱れ)があると、タンギングや高音域の持続が困難になったり、唇が傷つくことがあります。
下顎を強制的に前に出す動きにより、顎関節に負担がかかり、顎関節症を発症するリスクが高まります。
擦弦楽器(バイオリン、ビオラなど)
顎と肩で楽器を挟む姿勢を長時間続けるため、顎関節症を発症するリスクが高いとされています。
🦷 音楽家のための歯科治療
歯の形態の考慮: 虫歯治療や差し歯、被せ物(補綴物)を入れる際、楽器を吹く時のアンブシュアを考慮した形に調整されます。
仮歯の段階で実際に楽器を吹いて微調整を行う専門の歯科医院もあります。
ミュージックスプリント: 演奏時に歯にかぶせる薄いカバーで、唇の痛みやキズを防いだり、マウスピースが当たる面を均等化したりするために作製されます。
矯正治療: 楽器演奏への影響を考慮した矯正装置を検討し、演奏との両立を図ります。
顎関節症の治療: 顎の痛みや不調に対し、演奏姿勢の見直しや口腔内スプリント(マウスピース)治療などが行われます。
音楽家にとって、健康な歯とお口の状態は演奏能力の維持・向上に不可欠であるため、楽器演奏に理解のある歯科医師の専門的なケアが求められています。


