ザイコマインプラント(Zygomatic Implant)とは?
ザイコマインプラントとは
―「上顎骨が足りない方のための特殊インプラント」―
1.ザイコマインプラントの概要
ザイコマインプラントとは、上顎の頬骨(=頬骨:Zygoma)に固定する長いインプラントです。
通常のインプラントが上顎骨(歯槽骨)に埋入するのに対し、骨量が著しく不足している上顎無歯顎・重度吸収症例に対して胸骨に埋入します。
開発:1990年代(Brånemarkによる報告)
対象:重度上顎骨吸収症例
特徴:骨造成を回避できる、または大幅に減らせる
2.なぜ「頬骨」に固定するのか
〇上顎の問題点
上顎は、
☞骨が柔らかい
☞吸収が起こりやすい
☞上顎洞(副鼻腔)が存在する
という特徴があり、歯を失うと急速に骨が痩せます。
〇頬骨の特徴
一方、頬骨は、
☞非常に硬い皮質骨
☞吸収しにくい
☞生涯安定した骨量を保つ
👉 ここに固定することで、強固な初期固定が得られます。
3.通常のインプラントとの違い
項目
〇固定部位
通常インプラント 上顎歯槽骨
ザイコマインプラント 胸骨
〇長さ
通常インプラント 約8~15mm
ザイコマインプラント 約30~55mm
〇骨造成
通常インプラント 必要なことが多い
ザイコマインプラント 原則不要
〇手術難易度
通常インプラント 標準
ザイコマインプラント 非常に高い
〇対象症例
通常インプラント 軽~中等度欠損
ザイコマインプラント 重度骨吸収
4.適応症(どんな人に向いている?)
【主な適応】
☞上顎の骨が極端に少ない
☞骨造成(サイナスリフト・GBR)が困難
☞骨造成を避けたい
☞上顎総義歯が安定しない
☞通常のインプラントが不可能と診断された
👉 「インプラントは無理」と言われた方が対象になることが多いです。
5.手術の基本的な流れ
①CTによる三次元診断
②手術計画(ナビゲーション使用が多い)
③上顎後方から頬骨へインプラント埋入
④必要に応じ即時荷重(当日または短期間で仮歯装着)
※ 全身麻酔または静脈内鎮静で行われることが多い
6.即時荷重が可能な理由
ザイコマインプラントは、
頬骨という硬い骨に固定
長いインプラントによる広い支持
により、初期固定が非常に強いという特徴があります。
そのため、
手術当日もしくは数日以内に仮歯を入れられるケースが多く、
「歯がない期間」を最小限にできるのが大きな利点です。
7.成功率とエビデンス
長期研究では、
10年生存率:約95%前後
通常の上顎インプラントと同等、またはそれ以上
と報告されています。
特に、
☞適切な診断
☞熟練した術者
☞メンテナンス管理
が揃った場合、高い成功率が示されています。
8.メリット
【患者側のメリット】
☞骨造成が不要または最小限
☞治療期間が短い
☞早期に噛める
☞上顎総義歯から解放される可能性
【医療的メリット】
☞骨移植の失敗リスク回避
☞骨吸収症例への確実な解決策
9.デメリット・リスク(非常に重要)
【手術関連リスク】
☞上顎洞炎
☞副鼻腔トラブル
☞出血
☞神経障害
☞顔面腫脹
【技術的リスク】
☞術者の高度な経験が必須
☞施設・設備が限られる
☞再治療が困難
👉 誰でもできる治療ではありません。
10.メンテナンスの重要性
ザイコマインプラント後も、
☞インプラント周囲炎
☞清掃不良
☞上顎洞炎の再発
などのリスクは存在します。
そのため、
☞定期的な歯科受診
☞専門的クリーニング
☞咬合管理
が通常インプラント以上に重要です。
11.患者さんが誤解しやすい点
「どんな歯医者でもできる?」
→ ❌ できません(専門施設のみ)
「絶対安全?」
→ ❌ 高度医療でありリスクはあります
「最後の手段?」
→ ✔ 多くの場合、最終選択肢です
12.他の選択肢は?
①骨造成+通常インプラント
②総義歯
③インプラントオーバーデンチャー
👉 患者の全身状態・希望・リスク許容度により選択します。
13.まとめ(最重要ポイント)
ザイコマインプラントは
👉重度上顎骨吸収に対する高度専門治療
👉骨造成を回避できる強力な選択肢
👉高い成功率だが、リスクも大きい
👉経験豊富な専門医・施設が必須
👉十分な説明と同意が不可欠


