「噛み合わせ(咬合)と下顎運動の基礎知識に関するQ&A集」
噛み合わせ(咬合)と下顎運動の基礎知識 Q&A
Ⅰ.歯列・咬合彎曲の基礎
- 歯列とは何ですか?
- 口腔内を咬合面方向から見たときに歯が列をなして並んでいる状態を歯列といいます。
- 歯列弓とは何ですか?
-
歯の連なりを
臼歯:頬側咬頭頂または中心溝
犬歯:尖頭
切歯:切縁
で結んでみると、弓状のカーブを描きます。これを歯列弓と呼びます。
- 前後的咬合彎曲とは何ですか?
-
上顎歯列を側方から見たとき、
頬側咬頭頂を連ねて得られる前後方向の曲線です。
- スピーの彎曲とは何ですか?
-
下顎歯列を側方から観察したとき、
小臼歯・大臼歯の頬側咬頭頂を結んだ前後的彎曲を指します。
- モンソン球面説とは?
-
下顎歯列は
直径8インチ(半径4インチ)の球面に接するという理論で、その球の中心は篩骨の鶏冠にあるとされます。
- モンソンカーブとは何ですか?
-
モンソン球面説に基づく咬合彎曲で、
下方に凸の半径4インチの球面状カーブを指します。
- 側方咬合彎曲(ウイルソンカーブ)とは?
-
上下歯列を正面から観察したとき、
下顎歯列が下方に凸となる側方の彎曲です。
- ウイルソンカーブの意義は?
-
下顎歯は舌側傾斜している
スピーの彎曲とともに
側方運動時の適切な歯の接触を生み、咀嚼機能を向上させます。
Ⅱ.基準平面と咬合平面
- 咬合平面とは何ですか?
-
下顎
中切歯切縁
左右第二大臼歯遠心頬側咬頭頂
を含む平面です。
- フランクフルト平面とは?
-
左右の眼点(眼窩下縁)
耳点(耳珠上縁)
を含む平面で、再現性の高い水平基準面です。
- フランクフルト平面は何に使われますか?
-
咬合器への上顎模型付着の基準平面として用いられます。
- カンペル平面とは?
-
鼻翼下縁
耳珠上縁(外耳道下縁)
を結ぶ線で、フランクフルト平面に対して約15°前傾します。
- カンペル平面の別名は?
-
補綴学的平面と呼ばれ、咬合平面とほぼ平行です。
Ⅲ.咀嚼・嚥下と下顎位
- 咀嚼とは何ですか?
-
食物を
切断・破砕 → 唾液と混和 → 食塊形成
する一連の動作です。
- 嚥下とは何ですか?
-
形成された食塊が
口腔 → 咽頭 → 食道 → 胃
へ送られる無意識的・反射的運動です。
- 中心位(CR)とは?
-
歯の接触とは無関係に、
両側下顎頭が関節窩内で最前上方に位置する下顎位です。
- 中心位の特徴は?
-
歯の有無に影響されない
咬合不安定例でも記録可能
筋活動の影響を受けにくい
- ターミナルヒンジポジションとは?
-
中心位における純粋な蝶番運動が可能な終末位です。
- 中心咬合位とは?
-
上下歯が最大接触する時の下顎位で、歯によって決定されます。
- 中心咬合位と中心位は同じですか?
-
完全には一致しませんが、
正常有歯顎者では非常に近い位置にあります。
- 咬頭嵌合位とは?
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上下歯が咬頭対窩関係で嵌合した状態の下顎位です。
中心咬合位とほぼ同義です。
- 下顎安静位とは?
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運動後に下顎が
上顎と一定の距離を保って静止する位置です。
- 下顎安静位の臨床的意義は?
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無歯顎者の咬合高径決定の基準として用いられます。
Ⅳ.下顎運動と顆路
- ボンウィルの三角とは?
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左右下顎頭と下顎前歯切端を結ぶと
一辺4インチ(約10cm)の正三角形になるという考えです。
- バルクウィル角とは?
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切歯点と両側下顎頭を結ぶ線が
咬合平面となす角(平均26°)です。
- 偏心位とは?
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中心咬合位または中心位から
下顎を水平的に移動させた位置です。
- 作業側とは?
-
側方運動時に下顎が移動する側です。
- 平衡側(非作業側)とは?
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作業側の反対側を指します。
- ベネット角とは?
-
側方運動時に
平衡側顆頭の運動路が正中矢状平面となす角度で、平均約15°。
- ベネット運動とは?
-
作業側顆頭が外側方へ約1mm移動する現象です。
- ゴシックアーチとは?
-
左右側方限界運動によって描かれる
矢じり状の運動図形です。
- フィッシャー角とは?
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前方運動と側方運動での
矢状顆路角の差で、平均約5°です。
- サイドシフトとは?
-
側方運動時に生じる
下顎全体の横移動です。
- イミディエートサイドシフトとは?
-
側方運動初期に
平衡側顆頭が内側へずれる現象です。
- プログレッシブサイドシフトとは?
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イミディエートサイドシフト後に続く前下方への移動です。
Ⅴ.下顎運動と筋活動
- 下顎運動に関与する筋は?
-
咬筋
側頭筋
内側翼突筋
外側翼突筋
顎二腹筋などの舌骨上筋群
- 閉口運動に働く筋は?
-
咬筋・側頭筋・内側翼突筋。
- 開口運動に働く筋は?
-
外側翼突筋、顎二腹筋、顎舌骨筋、オトガイ舌骨筋。
- 前方運動の主働筋は?
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外側翼突筋。
- 後方運動に主に働く筋は?
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側頭筋後部筋束。
- 側方運動(左側)の筋活動は?
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右外側翼突筋
左側頭筋後部筋束
Ⅵ.ポッセルトの図形と咀嚼運動
- ポッセルトの図形とは?
-
下顎切歯点の
運動限界を示した図形です。
- なぜ「バナナ形」なのですか?
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筋・靭帯により運動が制限され、自由そうに見えて実は一定範囲内しか動けないためです。
- ポッセルト図形の主な点は?
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中心位
中心咬合位
最大前方位
下顎安静位
最大開口位
- 歯牙に誘導される運動は?
-
前方滑走運動
後方滑走運動
- 歯牙の影響を受けない運動は?
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前方限界運動
後方限界運動
終末蝶番運動
- 咀嚼運動の基本パターンは?
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咬頭嵌合位 → 開口 → 作業側偏位 → 閉口 → 接触滑走 → 咬頭嵌合位を繰り返します。
- 咀嚼サイクルとは?
-
この一連の運動の反復周期を指します。
- 顎関節の特徴は?
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頭蓋にある唯一の関節
左右一対の複関節
回転+滑走の複合運動
- 噛み合わせを理解する上で最も重要な視点は?
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咬合・顆路・筋・顎関節は常に連動して協調運動の結果として成り立っています。
単なる「歯の当たり」ではなく、動きの中での機能として全体像を捉えることが重要です。
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