口腔機能低下症 Q&A集
Ⅰ.基本概念
- 口腔機能低下症とは何ですか?
- 加齢や病気によりお口の機能(噛む・飲み込む・話す・歯の喪失・唾液分泌の低下など)が総合的に低下した状態を示す病名です。
- いつから起こる病態ですか?
- 高齢者に多いですが、中年期から始まることもあります。
- 加齢による自然な変化ですか?
- 単なる加齢による衰えだけでなく放置すると全身の健康(低栄養や要介護状態)に悪影響を及ぼしオーラルフレイルさらに全身のフレイルと連鎖して< いきます。
- 病名として正式に定義されていますか?
- 日本老年歯科医学会が診断基準を定めています。
- オーラルフレイルとの違いは?
- オーラルフレイルは「滑舌が悪くなる」など早期の衰えのサインで、口腔機能低下症は「かむ力」など7つの検査項目のうち、3項目以上が基準を下< 回った場合に診断される病名です。
- 放置するとどうなりますか?
- 摂食嚥下障害、低栄養、誤嚥性肺炎、社会的孤立・要介護リスクにつながります。
- 命に関わることはありますか?
- 誤嚥性肺炎などを通じて関与します。
- どのくらいの人が該当しますか?
- 高齢者では非常に多く、潜在患者も多いとされています。
- 歯が残っていても起こりますか?
- はい。歯の本数だけでは判断できません。
- 入れ歯をしていても起こりますか?
- はい。合っていない義歯はリスクになります。
- 男性と女性で差はありますか?
- 高齢女性に多い傾向があります。
- 早期発見は可能ですか?
- はい。歯科での簡単な検査で可能です。
- 歯科以外では診断できますか?
- 主に歯科領域で評価されます。
- 予防はできますか?
- 日常の口腔管理と機能訓練で予防できます。
- 健康寿命と関係しますか?
- 非常に深く関係します。
Ⅱ.症状・サイン
- 噛みにくくなるのはなぜですか?
- 歯の欠損、咬合不良、筋力低下が原因です。
- 食べ物をこぼしやすくなるのは?
- 口唇・頬・舌の協調運動低下です。
- 食事中にむせるのは危険ですか?
- はい。嚥下機能低下のサインです。
- 水でむせるのは異常ですか?
- 嚥下反射低下が疑われます。
- 滑舌が悪くなった気がします
- 舌の運動機能低下が原因です。
- 口が乾くのも関係しますか?
- はい。唾液分泌低下は重要な症状です。
- 食事に時間がかかるのは?
- 咀嚼効率の低下が原因です。
- 固いものを避けるようになりました
- 口腔機能低下の典型的行動変化です。
- 舌が動かしにくい感じがします
- 舌筋力低下が考えられます。
- 口臭が強くなりますか?
- 唾液減少・舌苔増加により起こります。
- 食後に疲れやすいのは?
- 咀嚼筋の持久力低下が影響します。
- 話すのが億劫になりますか?
- 発音機能低下が影響します。
- 食欲が落ちることはありますか?
- 食べにくさが原因で起こります。
- 体重減少と関係しますか?
- はい。低栄養につながります。
- 誤嚥に気づかないこともありますか?
- 不顕性誤嚥として起こることがあります。
- 咳が増えたのは関係しますか?
- 誤嚥のサインであることがあります。
- 声がかすれるのは?
- 嚥下機能低下と関連します。
- 食後に痰が絡むのは?
- 咽頭残留の可能性があります。
- 夜間の口渇は関係しますか?
- 唾液分泌低下が考えられます。
- 自覚症状がない場合もありますか?
- はい。検査で初めて分かることも多いです。
Ⅲ.原因
- 歯の本数は関係しますか?
- 強く関係します。
- 噛み合わせは重要ですか?
- 非常に重要です。
- 合わない入れ歯は影響しますか?
- 大きく影響します。
- 全身疾患は関係しますか?
- 脳血管障害、神経疾患などが関与します。
- 筋力低下が原因ですか?
- はい。サルコペニアと関連します。
- 栄養不足は影響しますか?
- 口腔筋力低下を招きます。
- 薬の副作用は関係しますか?
- 唾液減少を引き起こす薬があります。
- 口呼吸は影響しますか?
- 口腔乾燥を悪化させます。
- 社会的孤立も原因になりますか?
- 自身の機能低下により社会的孤立に拍車をかけます。
- 咀嚼習慣は関係しますか?
- 噛む回数が少ないと悪化します。
- やわらかい食事ばかりは問題ですか?
- 筋力低下を招きます。
- 舌苔は影響しますか?
- 味覚・嚥下に影響します。
- 姿勢は関係しますか?
- 嚥下姿勢に影響します。
- 認知症との関係は?
- 相互に悪影響を及ぼします。
- フレイルとの関係は?
- 口腔はフレイルの入り口です。
- ストレスは影響しますか?
- 食行動・唾液分泌に影響します。
- 睡眠不足は関係しますか?
- 全身筋力低下につながります。
- 喫煙は影響しますか?
- 唾液・粘膜機能を低下させます。
- 飲酒は関係しますか?
- 口腔乾燥を助長します。
- 複数要因が重なりますか?
- ほとんどが複合要因です。
Ⅳ.検査・診断
- 歯科で診断できますか?
- はい。保険診療で可能です。
- どんな検査をしますか?
- 舌圧、咀嚼、嚥下、唾液などを評価します。
- 舌圧検査とは?
- 舌の筋力を測定します。
- 咀嚼能力検査とは?
- 食べ物をどれだけ細かくできるか測ります。
- 唾液検査は何を見ますか?
- 分泌量や乾燥状態です。
- 痛みはありますか?
- ほとんどありません。
- 時間はかかりますか?
- 数分~十数分です。
- 定期的に検査すべきですか?
- 定期評価が望ましいです。
- 何歳から検査すべきですか?
- 50歳以降は特に推奨されます。
- 自己チェックはできますか?
- 簡易チェックは可能です。
- 歯の本数だけで判断しますか?
- しません。
- 入れ歯使用者も対象ですか?
- 対象になります。
- 改善度も評価できますか?
- はい。数値で追えます。
- 医科との連携は必要ですか?
- 状況により必要です。
- 家族が気づくことはありますか?
- 食事や会話の変化で気づくことがあります。
Ⅴ.治療・予防
- 治療で改善しますか?
- 多くの場合改善が期待できます。
- どんな治療がありますか?
- 咬合回復、義歯調整、リハビリです。
- 口腔リハビリとは?
- 口の筋肉を鍛える訓練です。
- パタカラ体操は効果がありますか?
- 舌・口唇機能向上に有効です。
- 発声練習は有効ですか?
- 嚥下機能向上にも役立ちます。
- 食事指導も行いますか?
- 非常に重要です。
- 噛む回数を増やすと良いですか?
- はい。機能維持に有効です。
- 入れ歯は作り直す必要がありますか?
- 改善が望めない場合、必要です。
- インプラントは有効ですか?
- 噛む力の回復に寄与しますが、要介護になった場合の口腔内清掃状態悪化のリスクを検討する必要があります。
- 自宅でできる対策は?
- 体操・会話・よく噛むことです。
- 家族の協力は必要ですか?
- 非常に重要です。
- 介護予防につながりますか?
- 直接つながります。
- 誤嚥性肺炎予防になりますか?
- なります。
- 認知症予防になりますか?
- 間接的に効果があります。
- フレイル予防になりますか?
- 口腔は重要な柱です。
- 歯科通院は意味がありますか?
- 大きな意味があります。
- どのくらいの頻度で通うべきですか?
- 定期管理が望ましいです。
- 高齢になってからでも遅くないですか?
- 決して遅くありません。
- 予防はいつから始めるべきですか?
- 早いほど良いです。
- 若い人にも関係しますか?
- 生活習慣次第で起こります。
- 仕事をしていても対策できますか?
- 日常生活で可能です。
- 話すことは重要ですか?
- 会話は最高のリハビリです。
- 笑うことも効果がありますか?
- 口腔周囲筋を使うため効果があります。
- 歯磨きも関係しますか?
- 口腔環境維持に不可欠です。
- 舌清掃は必要ですか?
- 有効です。
- 水分摂取は重要ですか?
- 唾液分泌を助けます。
- 栄養指導も受けるべきですか?
- 有効です。
- 医科と歯科の連携は重要ですか?
- 非常に重要です。
- 口腔機能低下症は治る病気ですか?
- 改善・維持が可能な状態です。
患者さんへの一言メッセージ
「お口を守ることは、食べる力・生きる力を守ることです。」


