「銀合金のリスクに関するQ&A集」
歯科用「銀合金」のリスクに関するQ&A
― アマルガムから金銀パラジウム合金、Ni合金まで ―
- 歯科でいう「銀合金」とは何ですか?
- 歯科で使われる「銀合金」は1種類ではなく、複数の材料群を含む総称です。主に以下があります。
アマルガム(銀合金+水銀)
金銀パラジウム合金(Ag–Pd–Au)
卑金属合金(Ni–Cr、Co–Cr など)
それぞれ性質・リスク・適応が大きく異なります。
- アマルガムとはどのような材料ですか?
- アマルガムは、銀・錫・銅などの合金粉末に金属水銀を練和して硬化させる、歴史の長い修復材料です。
湿潤に強く耐久性が高い
歯に接着しないため、機械的保持が必要
微量の水銀蒸気を放散することが知られています
- アマルガムは身体に有害ですか?
- 一般集団において明確な有害性は示されていません。
この評価を支えているのが、NECAT・Casa Piaという2つの大規模RCTです。
- 小児RCT(NECAT/Casa Pia)では何が分かりましたか?
- アマルガムとコンポジットを比較し、5〜7年追跡した結果、
IQ、記憶、注意力、運動協調
腎機能指標
いずれにも有害な差は認められませんでした。
ただし、
👉 尿中水銀はアマルガム群で上昇
👉 「曝露はあるが、臨床的影響は確認されなかった」
というのが正確な理解です。
- 妊婦や小児への影響はどう考えられていますか?
- 水銀は胎盤を通過し、胎児の神経発達に影響する可能性があります。
そのため、
EU・北欧:妊婦・小児への使用禁止
FDA(2020):妊婦、授乳婦、小児、腎疾患患者などは新規使用回避を推奨
日本では法的禁止はありませんが、慎重対応が標準的考え方です。
- アマルガムは外した方がいいですか?
- 「問題なく機能しているものを routine に外すことは推奨されません。」
理由は、
除去時に短期的な水銀曝露が増える
医学的利益が不明確な場合がある
👉 症状・リスクがある場合のみ、適応を絞って置換するのが合理的です。
- アマルガム除去時に注意すべき点は?
- 除去時は以下の安全対策が必須です。
ラバーダム
強力口腔外バキューム
十分な注水冷却
断続切削
これにより短期曝露を最小化できます。
- 金銀パラジウム合金とは何ですか?
- 日本で長年使われてきた保険診療の代表的金属です。
金・銀・パラジウム+銅など
耐食性・加工性・強度のバランスが良い
- 金銀パラジウム合金は体に悪いですか?
- 多くの人にとっては問題ありません。
ただし、口腔内は電解質環境のため、微小な腐食
金属イオン(Ag、Pd、Cu など)の微量溶出
が起こる可能性があります。
- 金銀パラジウム合金と金属アレルギーの関係は?
- 金属アレルギー素因がある方では、
口腔灼熱感
紅斑
口腔扁平苔癬様病変(OLCL)
が起こることがあります。
👉 原因金属の置換で寛解する症例が多数報告されています。
- 口腔扁平苔癬様病変(OLCL)とは?
- 金属修復物の隣接粘膜に限局して出る病変で、
左右対称でない
金属と接する部位に一致
👉 病変部の金属除去・置換で改善するのが特徴です。
- Ni–Cr や Co–Cr 合金は危険ですか?
- ニッケルは感作性アレルゲンとして有名ですが、
歯科合金からの溶出量は一般に低い
新規感作リスクは限定的
とするレビューが多いです。
- それでもNi合金に注意が必要なのはどんな人ですか?
- 以下に該当する方は注意が必要です。
既往のニッケルアレルギー
長時間粘膜接触する装置
異種金属が多い口腔内
👉 Niフリー合金・チタン・ジルコニアが選択肢になります。
- ガルバニー電流とは何ですか?
- 口腔内で異なる金属が接触すると、
電位差により微弱電流が発生
「ピリッとする」「しみる」「金属味」
を感じることがあります。
- ガルバニー電流は危険ですか?
- 多くは不快感レベルですが、
金属の組み合わせ
腐食状態
プラーク停滞
で症状が強くなることがあります。
- 銀合金による全身症状はありますか?
- 確率は低いですが、慢性曝露が疑われる症例報告として、
慢性疲労
集中力低下
感覚異常
免疫異常
などが挙げられることがあります。
ただし、因果関係が明確でないケースも多いため、慎重な評価が必要です。
- 金属アレルギーはどう診断しますか?
- 以下を総合判断します。
症状と金属位置の一致
皮膚科でのパッチテスト
試験的な金属置換と経過観察
- 銀合金を使わない選択肢はありますか?
- はい、あります。
チタン:高い生体親和性
ジルコニア:強度と審美性
セラミック:金属アレルギー回避
👉 ただし、設計・接着・技工精度が結果を左右します。
- 銀合金と虫歯(二次カリエス)の関係は?
- 金属そのものより、
マージン不適合
プラーク停滞
清掃不良
が主因です。
👉 定期メンテナンスが最重要です。
- 環境面での問題はありますか?
- アマルガムは水銀を含むため環境負荷があります。
ミナマタ条約
EUでの段階的使用禁止
👉 今後は代替材料への移行が進みます。
- 結局、銀合金は危険なのでしょうか?
- 結論として、
多くの人では安全に使われてきた
ただし、個別の感受性・状況で問題が生じる
「ゼロリスク」でも「一律に危険」でもない
👉 個別評価と材料選択の最適化が鍵です。
- 患者さんへの説明で大切なことは?
-
「不安を煽らず、事実を整理して伝える」ことです。
多くの方は問題なく使えています。
ただし、体質や症状によっては、より安全な材料に替えた方がよい場合もあります。
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