歯ぎしり(ブラキシズム)が歯・歯周組織・顎口腔系全体に及ぼす影響 Q&A
Ⅰ.基礎理解編
- 歯ぎしり(ブラキシズム)とは何ですか?
-
歯ぎしり(ブラキシズム)とは、無意識に歯をこすり合わせたり、強く噛みしめたりする習癖です。
多くは睡眠中に起こりますが、日中にも見られます。
- 歯ぎしりには種類があるのですか?
-
はい。主に次の3種類があります。
種類
内容
グラインディング
歯を横にギリギリこすり合わせる
クレンチング
強く噛みしめる(音が出ない)
タッピング
カチカチと歯を当てる
📌 **歯周組織への影響が最も大きいのは「クレンチング」**です。
- なぜクレンチングが問題なのですか?
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クレンチングは音が出ず、自覚がないまま非常に強い力が長時間かかるためです。
👉 夜間では体重以上の力が歯にかかることもあります。
Ⅱ.歯への影響
- 歯ぎしりで歯はどのように傷みますか?
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代表的な影響は以下です。
咬耗(歯のすり減り)
マイクロクラック(微細亀裂)
補綴物トラブル
- 咬耗とは何ですか?
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歯の表面(エナメル質)がすり減り、進行すると象牙質が露出します。
知覚過敏
歯が短く見える
噛み合わせの低下
👉 生理的咬耗を超えるスピードで進行します。
- マイクロクラックとは?
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歯の表面から内部に生じる肉眼では見えない微細なヒビです。
温冷痛
噛んだ時の違和感
将来の歯冠破折・歯根破折の前段階
📌 レントゲンではほぼ確認できません。
- 被せ物や詰め物にも影響しますか?
-
大きく影響します。
詰め物・被せ物の脱離
セラミック破折
マージン不適合
👉 治療の失敗ではなく「力の問題」で起こることが多いです。
Ⅲ.歯周組織への影響(最重要)
- 歯ぎしりは歯周病の原因ですか?
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直接の原因ではありません。
しかし、
👉 歯周病を悪化・進行させる強力な因子です。
- 歯根膜には何が起こりますか?
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歯ぎしりによる過剰な力で、
歯根膜の圧迫・虚血
炎症性変化
歯の動揺増大
が起こります。
これを外傷性咬合と呼びます。
- 歯槽骨への影響は?
-
以下が起こりやすくなります。
骨吸収の助長
垂直性骨欠損の進行
骨リモデリング異常
📌 プラークが少なくても骨が減る症例では、歯ぎしりの関与を疑います。
- 歯の位置にも影響しますか?
-
はい。
歯の挺出(伸びたように見える)
歯の移動
歯列の乱れ
👉 咬合が不安定になり、さらに歯ぎしりが助長される悪循環に。
Ⅳ.歯周病との関係(臨床的に極めて重要)
- 歯周病と歯ぎしりはどのように関係しますか?
-
悪循環を形成します。
歯周病
歯ぎしり
支持骨が減る
残った歯に力が集中
歯が動きやすい
外傷性咬合が増大
炎症が続く
組織修復が妨げられる
- 歯ぎしりを疑う臨床サインは?
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プラークコントロール良好なのに動揺が強い
出血は少ないのに歯が痛む
特定の歯だけ急激に悪化
👉 力の関与を疑う所見です。
Ⅴ.歯以外への影響
- 顎関節にも影響しますか?
-
はい。
顎関節痛
開口障害
関節雑音
を引き起こすことがあります。
- 全身症状はありますか?
-
あります。
起床時の顎の疲れ
頭痛
肩こり・首の緊張
📌 歯ぎしりは全身の緊張反応の一部でもあります。
Ⅵ.歯ぎしりの本質
- 歯ぎしりは「クセ」ですか?
-
いいえ。
👉 ストレスや脳の覚醒反応に関係する生理現象です。
- 自分の努力で止められますか?
-
完全には止められません。
👉 本人を責めてはいけません。
Ⅶ.対応の基本(歯周病患者)
- 治療の目標は何ですか?
- 歯ぎしりを完全に止めることではない
歯と歯周組織を「守る」こと
- 具体的な対策は?
-
日中の噛みしめ癖への「気づき」とリリース
ナイトガード(スプリント)
歯周治療との併用
必要に応じた咬合調整
📌 歯周病患者ではスプリントは予防装置として極めて重要です。
Ⅷ.歯ぎしりによる歯頸部欠損(NCCL)
- 歯ぎしりで歯の根元が欠けるのはなぜ?
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これは歯頸部欠損(NCCL)で、歯ぎしりが関与するタイプはアブフラクションと呼ばれます。
- 歯ぎしりの歯頸部欠損は削れるのですか?
-
いいえ。
👉 「削れる」のではなく「割れる」現象です。
- 発生メカニズムを教えてください
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横・斜め方向の強い力
歯がたわむ
歯頸部に応力集中
微小亀裂 → 疲労破壊
楔状欠損へ
📌 これがアブフラクション説です。
- 歯ぎしり由来の特徴は?
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V字・楔状
表面が滑沢
犬歯・小臼歯に多い
左右対称
咬耗・亀裂を伴う
- 他原因との違いは?
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原因
特徴
ブラッシング
U字・なだらか
酸蝕症
丸み・溶けた印象
歯ぎしり
シャープ・割れた印象
📌 多くは複合要因です。
- 歯周病があるとどうなりますか?
-
歯がより「たわみやすく」なり、
👉 欠損が進行しやすくなります。
- 治療の考え方は?
-
🔴 原因(力)のコントロールが最優先
ナイトガード
日中の意識づけ
必要に応じて修復(フロアブルレジン)
📌 詰めるだけでは再発します。
Ⅸ.最終まとめ(重要)
- 歯ぎしりを一言で言うと?
-
「歯を揺さぶる力」
- 歯周病があると?
-
その揺さぶりに耐えられなくなる
- 歯周治療で最も大切な視点は?
-
☞ 歯ぎしり=力の問題
☞ 歯周病=炎症の問題
👉 プラークコントロール+力のコントロールが必須
- 結局、歯ぎしりによる影響をどう考える?
- 歯ぎしりは歯・歯周組織・顎口腔系全体に影響する
歯頸部欠損は「歯からの力の警告」
守る治療こそが本質
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