歯髄温存療法 Q&A集
◆ 基本
- 歯髄温存療法とは?
- 虫歯で侵された歯でも、なるべく神経(歯髄)を残すことを目的とした治療方法です。
- 目的は何ですか?
- 神経を残し、歯の寿命を最大限延ばすことです。
- 神経を残すメリットは?
- 痛みや温度を感じる機能が保たれ、歯が長持ちします。
- どのような場合に適応になりますか?
- 虫歯が深いが、歯髄がまだ回復できる状態のときです。
- 適応外のケースは?
- 強い自発痛や腫れ、根尖病変がある場合は適応外です。
- 神経を完全に取る治療とはどう違いますか?
- 根管治療は神経を全て除去しますが、温存療法は可能な限り全部もしくは部分的に神経を残します。
- 歯髄を残すと何が良いのですか?
- 歯が脆くなりにくく、破折リスクが下がります。
神経を残した時は根管治療の必要がなくなります。
- 治療中の痛みはありますか?
- 麻酔を行うため基本的に痛みはありません。
- どのような材料を使いますか?
- 主にMTAやバイオセラミック系材料を使用します。
- MTAとは何ですか?
- 生体親和性が高く、歯髄の治癒を促進する特殊なセメントです。
- 治療時間はどのくらいですか?
- 通常30〜60分ほどです。
- 通院回数は何回ですか?
- 多くは1〜2回です。
- 費用は高いですか?
- 使用材料により自費診療になることが多いです。
- 成功率は高いですか?
- 適切な症例選択ができれば成功率は80〜90%以上と報告されています。
- 失敗するとどうなりますか?
- 根管治療が必要になります。
- 歯髄温存療法は何歳でもできますか?
- 基本的に全年齢可能ですが、若年者ほど成功率が高いです。
- 乳歯でもできますか?
- はい、乳歯でも可能です。
- 治療後に痛みが出ることはありますか?
- 軽い痛みは出る場合がありますが、通常数日で治まります。
- 治療後はすぐ普段通り噛めますか?
- 詰め物が欠けたり脱落する可能性があるため当日は柔らかい食事がおすすめです。
- 歯髄温存療法は将来の再治療を避けられますか?
- 成功すれば再治療の頻度は大きく下がります。
◆ 部分的歯髄切除(Partial Pulpotomy)
- 部分的歯髄切除とは?
- 露出した部分だけ神経を除去し、深部の健康な神経を残す治療です。
- なぜ全部取らないのですか?
- 健康な部分を残すことで歯の寿命を延ばすためです。
- 若い患者で成功率が高いのはなぜ?
- 歯髄の治癒力が高いからです。
- 虫歯が深くても適応できますか?
- 炎症が部分的であれば可能です。
- どんな器具を使用しますか?
- 回転器具で薄く神経を削り、出血を止めて薬剤を置きます。
- 出血は問題ですか?
- 過度な出血は炎症が広範なサインで、適応外となることがあります。
- どのくらい神経を削るのですか?
- 1〜3mm程度が一般的です。
- 成功のカギは何ですか?
- 感染コントロールと適切な出血管理です。
- 治療後どんなフォローが必要?
- 6ヶ月〜1年ごとのX線検査が推奨されます。
- 部分的歯髄切除は永久的な処置ですか?
- 成功すれば永久的に歯を保存できます。
- 部分的歯髄切除は痛いですか?
- 麻酔を行うため痛みはほぼありません。
- 深く削りすぎるとどうなりますか?
- 炎症が深部に及ぶ可能性があり、成功率が下がります。
- 治療後に冷たいものがしみることはありますか?
- 軽度しみる場合がありますが、多くは数週間以内に改善します。
- 断髄と何が違いますか?
- 断髄は神経を根の先端まで除去するため、温存ではありません。
- 部分的歯髄切除はどの歯でもできますか?
- 前歯・臼歯とも可能です。
◆ 覆髄(Direct/Indirect pulp capping)
- 覆髄療法とは?
- 歯髄の上に保護材を置くことで神経を守る処置です。
- 直接覆髄とは?
- 虫歯処置中に神経が露出した場合、直接薬剤を置いて密閉します。
- 間接覆髄とは?
- 神経直前の象牙質を薄く残して薬剤を置く方法です。
- 間接覆髄はなぜ有効?
- 完全除去よりも神経の炎症を抑えやすいからです。
- 覆髄に使う薬は?
- MTA、バイオセラミック、水酸化カルシウム系セメントなど。
- 覆髄は古くから行われていますか?
- はい、比較的歴史は長いですが材料の進化で成功率が上がりました。
- う蝕の段階でも適応は変わりますか?
- 虫歯が歯髄に近いほど慎重な判断が必要です。
- 覆髄の成功率は?
- MTA使用で80〜90%と高いです。
- 覆髄後の注意点は?
- 強く噛まない、冷水刺激を避けるなどです。
- なぜ覆髄は神経を守れるのですか?
- 強力な封鎖性と、象牙質の再生(硬組織形成)を促す性質があるためです。
- 直接覆髄の適応条件は?
- 症状がなく、偶発的露髄で清潔な露出部の場合が理想です。
- 虫歯による露髄でも可能ですか?
- 適応は慎重で、炎症が軽度の場合に限られます。
- 覆髄後の失敗原因は?
- 封鎖不全、細菌感染、無症状性の歯髄壊死などです。
- 覆髄後のレントゲンチェックは必要?
- はい、半年〜1年ごとに確認します。
- 覆髄と間接覆髄はどちらが良いですか?
- 症例によりますが、症状がなければ間接覆髄の成功率が高いです。
- 歯がズキズキしていても覆髄できますか?
- できません。自発痛は温存療法の適応外です。
- 覆髄で新しい象牙質ができますか?
- はい、象牙質架橋が形成されることがあります。
- 覆髄の材料はどれが一番良い?
- 現時点ではMTA・バイオセラミックが最も予後が良いとされています。
- 被せ物は必要ですか?
- 歯質が少ない場合はクラウン補綴が推奨されます。
- 覆髄した後に痛い時は?
- 噛んだ時の違和感程度なら経過観察しますが、強い痛みは神経を取ります。
- 覆髄は虫歯が深くても可能?
- 感染が制御できていれば可能です。
- 覆髄をすると将来の根管治療率は下がりますか?
- はい、成功すれば大幅に低下します。
- 覆髄処置後の冷水痛が続く場合は?/dt>
- 数週間〜1ヶ月経っても改善しなければ再評価が必要です。
- 神経が露出しても必ずしも抜髄しなくて良い?
- 条件が整えば抜かずに済む可能性があります。
- 歯髄温存目的でラバーダムは必要?
- はい、無菌化のため推奨されます。
◆ 診断と適応の判断
- 歯髄診断はどう行いますか?
- 症状の聞き取り、冷温テスト、打診、X線などを用います。
- 自発痛がある場合は?
- 不可逆性歯髄炎であり温存は困難です。
- 咬合痛はどうですか?
- 広範な炎症が疑われ、慎重な判断が必要です。
- 冷たいものがしみるだけなら?
- 可逆性の可能性があり温存療法が適応になります。
- 深い虫歯でも痛みがない場合?
- 温存適応となる可能性は十分あります。
- X線で歯根に影がある場合?
- 根尖性歯周炎のため温存は不可です。
- 歯髄の「生活反応」は何を意味しますか?
- 神経が生きている証拠で、温存に有利です。
- 高齢者でも温存できますか?
- 可能ですが成功率は若年者より低くなる傾向があります。
- 歯髄の炎症がどこまでなら温存できますか?
- 炎症が部分的であれば可能です。
- 術中露髄が起こった場合どう判断しますか?
- 出血量・血液の質・色・部位・広さで判断します。
- 露髄部が黒い場合?
- 感染が深いため温存適応は低いです。
- 露髄が点状の場合?
- 温存成功率が高い重要サインです。
- 術中に止血できない場合?
- 炎症が広いため部分的歯髄切除が検討されます。
- 術前に激痛があった場合?
- 不可逆性の可能性が高く温存できません。
- 虫歯が大きく穴が開いていても?
- 重度でも条件が良ければ可能です。
- 歯髄壊死の場合は?
- 温存はできず根管治療が必要です。
- 歯根膜炎がある場合?
- 適応外のことが多いです。
- 歯髄温存療法成功の予測因子は?
- 年齢、症状の有無、露髄の性状、止血の可否などです。
- 虫歯菌が多いと失敗しやすい?
- はい、細菌感染が大きく関与します。
- 適応判断は歯科医の経験で変わる?
- 診断能力と材料選択の知識が重要です。
◆ 治療後の経過と注意点
- 治療後どのくらい経過観察が必要?
- 最低6ヶ月〜1年のフォローが推奨されます。
- 治療後すぐに痛くなる場合?
- 一時的な炎症反応のこともありますが、強い場合は再評価が必要です。
- 噛むと違和感が長く続く場合?
- 治癒不全の可能性があります。違和感の程度にもよりますが神経を取る必要が高まります。
- 温度痛が長引くのは?
- 神経の炎症が残っている可能性があります。
- 成功しているかどうかは何で判断?
- 症状の消失とX線での硬組織形成の確認です。
- 再発することはありますか?
- ありますが成功すれば多くは長期間安定します。
- 治療後に大きな詰め物やクラウンが必要なことは?
- 歯質が少ない場合は必要です。
- 治療後に再度虫歯になると?
- 再治療が必要で、神経が保存できない場合もあります。
- 成功した場合どのくらい持ちますか?
- 10年以上安定するケースも多数あります。
- 運動や飲酒は当日できますか?
- 軽度なら問題ありませんが控えめが推奨されます。
- 治療後に冷たい飲み物を飲んで良い?
- 数日は避ける方が症状が出にくくなります。
- 歯ぎしりがあると失敗しやすい?
- 歯に負荷がかかり成功率が低くなる場合があります。
- ナイトガードは必要?
- 歯ぎしり・食いしばりが強い人には有効です。
- 治療後の正しい歯磨き方法は?
- 優しく磨き、歯肉を傷つけないようにします。
- 治療後に詰め物が外れると?
- すぐ受診すべきです。細菌感染のリスクが高まります。
- 成功したのに時間が経って痛むことは?
- まれですがあり得ます。その場合は再評価が必要です。
- 温存に成功した歯は弱い?
- 適切な補綴を行えば十分長期に機能します。
- レントゲンで治癒したかどうかはすぐ分かる?
- 象牙質の形成には数ヶ月かかります。
- 妊娠中でも受けられる?
- 局所処置が中心なので可能な場合が多いです。
- 歯髄温存療法の長期的な最大のメリットは?
- 歯の寿命を最大限に延ばし、将来の抜歯リスクを大幅に減らせることです。
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