⭐「お口の中のバイオフィルム」は、歯科疾患の根本的な原因の1つであり、歯科治療や予防の考え方に深く関わっています。
🔹 バイオフィルムとは?
バイオフィルムとは、細菌が自分たちを守るために作り出す「ネバネバした膜」のことです。
歯の表面、歯ぐきの溝、舌、入れ歯、インプラントなどに付着して形成されます。
この膜の中では、細菌たちが「共同体」を作り、外からの刺激(唾液、抗菌薬、うがい薬など)から守られています。
つまり、一度できると簡単には落ちないのが特徴です。
🔹 バイオフィルムが及ぼす主な影響
① むし歯(う蝕)の原因
バイオフィルム中のミュータンス菌などが糖分を分解し、酸を作ります。
この酸が歯の表面(エナメル質)を溶かし、むし歯になります。
② 歯周病(歯肉炎・歯周炎)の原因
歯と歯ぐきの境目にできたバイオフィルムには、嫌気性菌(酸素を嫌う細菌)が多く存在します。
これらの菌が毒素を出して歯ぐきに炎症を起こし、進行すると歯を支える骨まで溶かすことがあります。
③ 口臭の発生
バイオフィルム内の細菌が、タンパク質を分解して硫黄化合物(卵が腐ったような臭い)を発生させます。
④ 全身への影響
最近の研究では、口の中のバイオフィルム中の細菌が血流に入り、
糖尿病・心筋梗塞・脳梗塞・誤嚥性肺炎・早産などの全身疾患に関係することが分かっています。
🔹 【歯科との関わり】
・定期的なプロフェッショナルケア
歯科医院でのスケーリング(歯石除去)やPMTC(専門的クリーニング)でバイオフィルムを物理的に除去します。
・レーザー治療
エルビウムヤグレーザーなどは、バイオフィルムを破壊し、歯周ポケット内の殺菌に効果的です。
・セルフケアの指導
バイオフィルムは歯ブラシだけでは落としにくいため、フロス・歯間ブラシ・舌清掃・電動ブラシなどの使い方を指導します。
・うがい薬・デンタルリンス
口腔全体の細菌数を抑える補助的な役割。
ただし、バイオフィルムそのものを溶かす力は限定的です。
🔹 【まとめ】
◎バイオフィルムは、むし歯・歯周病・口臭・全身疾患の原因となる。
◎一度できると除去が難しいため、毎日のケア+歯科での専門的クリーニング
が必要。
◎歯科では、バイオフィルムを「見えない敵」として、治療と予防の最重要課題
として位置づけています。


