💤睡眠時無呼吸症候群と歯科治療のお話
~いびき・無呼吸でお悩みの方へ~
✅ 睡眠時無呼吸症候群(SAS)ってなに?
睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)とは、
寝ている間に呼吸が止まったり弱くなる病気です。
特に多いのが「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)」で、
喉の奥(上気道)がふさがってしまうことで呼吸ができなくなります。
📌こんな症状、ありませんか?
- 大きないびきをかく
- 寝ているときに「呼吸が止まっている」と言われる
- 日中に強い眠気を感じる
- 朝起きたときに頭が重い・だるい
- 集中力が続かない
- 夜中に何度も目が覚める
- 寝ても疲れが取れない
👉 一つでも当てはまる方は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
🦷歯科でできる治療法:口腔内装置(マウスピース)
どんな装置?
「口腔内装置(OA)」は、寝るときに装着するオーダーメイドのマウスピースです。
下あごを前に軽く出すことで、舌やのどの奥の空間(気道)を広げ、
いびきや無呼吸を防ぎます。
治療の流れ
- 医科で診断(睡眠検査)
➡ 医師から歯科への紹介状が必要です - 歯科で診査・型取り
➡ 歯並び・顎の状態をチェック - 装置の製作・装着
➡ お口に合った装置をお作りします - 装着後の確認・調整
➡ 慣れるまで使い方を丁寧にサポートします
✅ こんな方におすすめ!
- 軽度~中等度の睡眠時無呼吸症候群と診断された方
- CPAP(持続陽圧呼吸療法)が合わなかった方
- いびきでお悩みの方
⚠️注意点・副作用
- 最初は装着に違和感があることがあります
- 顎関節に負担がかかる場合があります
- 長期間使用すると噛み合わせに変化が出ることがあります
👉 定期的な歯科でのチェックが大切です!
💰費用について
口腔内装置は医科からの紹介がある場合、保険適用となります。
内容 | 費用(3割負担の場合) |
初回検査・型取り | 約3,000~5,000円 |
装置製作・装着 | 約10,000~15,000円 |
※症状や装置の種類によって異なる場合があります。
📝まとめ
- 歯科では、睡眠中の無呼吸やいびきをマウスピースで改善できます
- 装置はオーダーメイドで、保険も適用可能です
- 医科との連携で、安全・効果的な治療が受けられます
睡眠時無呼吸症候群をさらに詳しく掘り下げます
🔷 睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは
✅ 定義
睡眠中に繰り返し呼吸が停止(無呼吸)または低下(低呼吸)する状態で、以下の2種類に分類されます
- 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)
上気道(主に咽頭)が睡眠中に塞がることで起こる。
⇒ 歯科治療の対象はこちら - 中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)
脳から呼吸指令が出ないために起こる。
⇒ 歯科治療の対象外、医科での管理。
🔷 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の主な症状
- いびき(特に大きく不規則)
- 無呼吸(家族に指摘される)
- 日中の強い眠気、集中力低下
- 頭痛、起床時の口渇
- 高血圧、糖尿病の悪化
- 性機能低下
🔷 歯科が関与できるOSAのメカニズム
OSAでは舌根沈下・口蓋垂・軟口蓋の弛緩・肥厚などが原因で気道が狭窄します。歯科治療では以下のような方法で、物理的に上気道を確保することが目的です。
🔷 歯科で行う主な治療法:口腔内装置(OA: Oral Appliance)
✅ 口腔内装置(OA)とは?
睡眠時に装着するマウスピース型の装置で、下顎を前方に誘導固定することで舌根沈下を防ぎ、気道を広げる治療法です。
✅ 適応患者
- 軽症〜中等症のOSA患者(AHI:5〜30)
- CPAPに耐えられない中等症〜重症の患者
- いびきが主訴の非無呼吸患者
※重症OSA(AHI > 30)にはCPAPが第一選択だが、医師の指示によりOAが適応となる場合あり
✅ OAの種類と特徴
種類 | 特徴と使用例 |
固定式(モノブロック) | 装着・調整が容易。下顎の前方移動量は固定。軽症者に多く使用される。 |
可変式(スプリットタイプ) | 上下分割されていて、下顎の前方移動量を調整可能。適合精度や快適性が高い。 |
カスタムメイド型 | 歯科医院で歯型を取り、専用の装置を技工所で製作。フィット感・効果が良い。 |
✅ OAの効果
効果 | 解説 |
無呼吸・低呼吸回数の減少 | AHI(Apnea-Hypopnea Index)が平均30〜70%改善 |
いびきの改善 | 音量と頻度が減少する |
日中の眠気や集中力の改善 | 睡眠の質の向上による |
QOL(生活の質)の向上 | 睡眠障害による倦怠感や不安感が軽減 |
✅ 装置製作の流れ(歯科での診療の流れ)
- 医師(睡眠専門医、耳鼻科、呼吸器内科など)による診断と紹介
- PSG(終夜睡眠ポリグラフ)検査が必要
- 紹介状(診療情報提供書)をもとに歯科へ受診
- 歯科での診査
- 口腔内の状態(歯列、顎関節、咬合)チェック
- OA製作が可能か判断(義歯や歯周病の程度も考慮)
- 印象採得と咬合位の記録
- 顎間関係を記録し、下顎を前方誘導した咬合位で記録
- 装置の装着・調整
- 適合や快適性の確認。必要に応じて微調整
- 効果判定と医科への報告
- 再度PSG検査で効果を判定
- 医師へ報告し、治療継続判断
🔷 OAのデメリット・副作用
問題点 | 説明 |
顎関節症の誘発・悪化 | 長時間の下顎前方位により関節に負荷 |
咬合の変化 | 長期使用で開咬や交叉咬合などを生じる場合あり |
歯の動揺・痛み | 適合不良、歯周病がある場合には特に注意が必要 |
装着不快感 | 慣れるまでに時間がかかる患者もいる |
🔷 医科歯科連携の重要性
歯科単独でSASの診断や治療を進めることはできません。医師による確定診断と連携体制が必須です。
歯科医師の役割 | 医師の役割 |
OAの設計・製作・管理 | PSG検査と診断、治療方針決定 |
装着後のフォローアップ | 再検査・CPAP適応判断 |
装置の修理や再製作など | 合併症の全身管理 |
🔷 保険適用と費用(日本)
- 師からの紹介状(診療情報提供書)がある場合、OA治療は保険適用可能です。
- 保険点数:約5,000点(自己負担:3割で約15,000円〜20,000円程度)
- 定期的な再診・調整も保険対応
🔷 OAが向いていないケース
- 顎関節症が強くて下顎前方移動が困難
- 重度の歯周病や残存歯が少ない
- 中枢性無呼吸症候群
- 重度の鼻閉などで口呼吸が強い
🔷 今後の展望:デジタルOA・テレモニタリング
- 3Dスキャン・CAD/CAMによる精密OA
- 口腔内センサー付き装置で使用状況や効果を記録
- 遠隔モニタリングによる医科歯科連携の効率化
🔷 まとめ
ポイント | 説明 |
歯科はSAS(OSA)の補助的治療の主力となり得る | |
OAは軽症〜中等症に効果的だが、適応評価と医科連携が必須 | |
装置の精密な製作・調整・フォローが治療成功のカギ | |
咬合や顎関節への影響もあるため慎重な観察が重要 |