渋谷区恵比寿の歯科医院|SHIRON DENTAL OFFICE(シロンデンタルオフィス)

糖尿病と歯科治療の関係を詳しく解説します

👉糖尿病と歯科治療の関係を、臨床エビデンスに基づいてコンパクトにまとめます。

要点(結論)→しくみ→治療への影響→処置別の実践ポイント→薬剤/麻酔→受診時チェックリストの順で

◎要点(結論)

⇌糖尿病と歯周病は「双方向」に悪影響を与えます。

血糖コントロールの不良は重度歯周病や感染・創傷治癒遅延を増やし、逆に歯周病治療により平均してヘモグロビンA1cをわずかに下げます(3–4か月で約0.3%低下)。

抜歯や歯周外科、インプラントなどの侵襲的処置は「良好~中等度にコントロールされた糖尿病」なら一般に安全に行えます。

コントロール不良では感染・失敗率が上がるため、まず血糖の安定化が優先されます。

周術期(処置の前後)の目標血糖は概ね80–180 mg/dLが推奨レンジです(医科の周術期指針)。

SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン等)は、鎮静や全麻・絶食が絡む処置前は「原則3–4日前から中止」するのが各学会・ADA基準。

1) 糖尿病と口腔の「双方向関係」

2型糖尿病では、歯周病の有病率・重症度・進行が高く、創傷治癒遅延や口腔感染(カンジダ等)も増えます。

国際コンセンサス(EFP/IDFワークショップ)は、歯周炎が全身炎症を介してインスリン抵抗性を悪化させうる点を整理し、医科歯科連携を強く推奨しています。

2) 歯周治療はA1cをどれくらい下げる?

コクラン系レビュー/メタ解析:スケーリング・ルートプレーニング(必要に応じて抗菌薬付加)で、3–4か月後のHbA1cが平均0.31%低下。治療群-0.31%(95%CI -0.54~-0.08)(T2D)。効果の大きさは小~中等度ですが、一貫して「有益」。

ADA(米歯科医師会)も、「エビデンスはばらつくが、歯周治療自体は患者に利益」と整理。

3) 歯科治療全般の安全対策(低血糖/高血糖)

予約は朝が望ましい。

食事・服薬は普段通り(鎮静や絶食が絡むときは主治医と用量調整)。診療室にはブドウ糖や対応手順を常備。

低血糖が疑わしければ即座に15–20gの糖補給→再測定。

血糖が不安定な場合は選択的(待てる)処置は延期し、まず内科的コントロール改善を。

周術期の目標血糖 80–180 mg/dL(広く一致)。

4) 処置別の実践ポイント

【抜歯・歯周外科】

感染・ドライソケット・治癒遅延のリスクがやや上昇。

清潔操作と術後のプラークコントロールを徹底。

予防的抗菌薬は「Routineでは不要」。

ただしコントロール不良(例:A1c高値)や広範囲外科では術者裁量で投与を検討(日本歯周病学会の提言に準拠)。

【インプラント】

良好~中等度コントロールの糖尿病では3年程度の生存率は概ね高いとの系統的レビュー。高血糖は周囲炎・早期失敗のリスクで、HbA1cをリスク評価に用いることが推奨されています。

日本のガイダンスは、侵襲的処置は可能ならA1c 7%未満を目標、少なくとも9%未満を目安に検討するといった実務目安を提示(個別判断)。

5) 局所麻酔・鎮静・鎮痛薬

**エピネフリン含有局所麻酔(例:1/100,000)**は、コントロールされた糖尿病で概ね安全とする臨床試験・臨床研究が複数あります。大量投与は避け、バイタルをモニター。

高血圧や重い心疾患が併存する場合は、エピネフリン量を抑える/濃度を下げる/無血管収縮薬製剤を検討するのが一般的実務。

6) 周術期の糖尿病薬(重要)

SGLT2阻害薬:予定処置の3–4日前から中止(特に鎮静・全麻・絶食を伴う場合)。

術後の経口摂取再開後に再開。euglycemic DKA回避のための国際的な共通方針です。

その他の経口薬:当日朝の投与を一時保留することがあり、主治医と事前調整(医科の標準)。

インスリン使用者は低血糖回避を最優先(食事・投与タイミングの調整、術前の血糖測定)。

7) 診療側・患者側チェックリスト

来院前に共有したい情報

  •  最新のHbA1c、当日の血糖値、糖尿病の種類と薬剤(SGLT2阻害薬の有  

 無を明確に)

  •  低血糖エピソードの既往、糖尿病合併症(腎・心・脳・網膜)
  •  喫煙の有無(歯周病リスク上昇)

処置前後のポイント

通常どおり食事・服薬(※鎮静/全麻/絶食が絡む場合は主治医と調整)

診療室で指先血糖を確認できる体制/ブドウ糖や対応手順を常備

術後は口腔衛生(クロルヘキシジン含嗽等)と禁煙の徹底、創部の自己管理

代表的エビデンス(抜粋)

○歯周治療後のA1c低下(約0.3%/3–4か月):Cochrane系システマティックレビュー(2022–2023更新)。

○歯周炎と糖尿病の双方向関係・連携推奨:EFP/IDFコンセンサス(J Clin Periodontol)。

〇歯科での一般的配慮(朝の予約、低血糖対策、コントロール不良では選択的処置延期、インプラントの成績とA1c重視):ADA Oral Health Topics。

〇インプラントや抗菌薬の実務目安(A1c 7%未満目標/9%未満目安、予防抗菌薬の位置づけ):日本歯周病学会 指針資料。

〇周術期血糖目標(80–180 mg/dL)・SGLT2中止(3–4日前):ADA Standards of Care(病院版/周術期)と心血管学会ガイド。

〇エピネフリン含有局麻の安全性:RCT・観察研究。

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