⭐口腔機能低下症」で嚥下(えんげ)機能が低下している場合、実は口だけでなく全身にも大きな影響が及びます。
🔹 まず、「嚥下機能」とは?
嚥下とは、食べ物や飲み物を安全に口から胃まで運ぶ一連の動作のことです。
舌・口蓋・咽頭・喉頭・食道といった多くの筋肉が協調して働く、非常に精密な機能です。
🔹 嚥下機能が低下すると起こる身体の変化
① 食事がしにくくなる(摂食障害)
食べ物をうまくまとめて飲み込めない
口の中やのどに食べ物が残る(咽頭残留)
水分を飲むとむせやすい・咳き込みやすい
➡ 結果として、食事量が減り、低栄養状態(サルコペニア)に陥ります。
② 誤嚥(ごえん)のリスクが高まる
飲み込む力や、のどを閉じる力が弱くなると、
食べ物や唾液が気管に入ってしまう(誤嚥)ことがあります。
➡ その結果、
誤嚥性肺炎(細菌が肺に入り込む)
慢性的な咳・微熱・だるさ
肺機能の低下
など、全身への影響が生じます。
③ 栄養・筋力の低下(悪循環)
嚥下しづらいと、柔らかい・噛まなくてもよい食事が中心になり、
タンパク質・ビタミン・ミネラルが不足しやすくなります。
➡ これが進むと、
全身の筋肉量(特に舌・口周り・首の筋肉)がさらに減る
さらに嚥下力が落ちる
という「サルコペニアの悪循環」に入ります。
④ 脳や神経機能への影響
嚥下には、脳幹・延髄などの神経が関係します。
嚥下機能の低下は、神経の反射機能や協調運動の低下のサインでもあります。
高齢者では、認知症や脳血管障害との関連も報告されています。
⑤ 生活の質(QOL)の低下
「食べるのが怖い」「むせるから食事が楽しめない」と感じるようになります。
外食・会話の機会が減り、社会的孤立や抑うつ傾向が進むこともあります。
🔹 歯科での関わり(嚥下機能を守るために)
歯科では、口腔機能低下症に対して以下のような支援を行います。
・口腔機能検査(舌圧、咀嚼力、嚥下評価)
機能低下の早期発見・記録・経過管理
・口腔リハビリ(舌・頬・唇・喉の運動)
嚥下・発音・咀嚼の筋肉を維持強化
・パタカラ体操・あいうべ体操
口輪筋・舌筋・喉の動きを改善
・口腔清掃の徹底
誤嚥性肺炎の原因菌を減らす
・義歯・咬合調整
食べやすく、飲み込みやすい環境づくり
🔹 まとめ
舌・口腔・喉の筋力や協調運動の低下
主な影響
むせ・誤嚥・低栄養・サルコペニア・肺炎・生活の質低下
歯科の役割
口腔リハビリ・嚥下訓練・清掃指導・義歯調整・早期発見


