詰め物や被せ物で使う白い材料についてわかりやすく詳しく解説します。
歯科で詰めたり被せたりする白い材料の代表選手がコンポジットレジンとセラミックです。
歯科治療を受けた方で、これらの白い材料を用いた治療を経験している場合も多いと思います。
では、コンポジットレジとセラミックとはどのような材料でしょうか。
コンポジットレジンとセラミックとは?
まず材料から簡単に説明します。
1) コンポジットレジン(プラスチック)
ベースレジンとフィラーが主成分のプラスチック材料
2) セラミック(陶材、ジルコニア)
無機質個体材料の総称。歯科用セラミックスの代表はポーセレン (陶材)で、本来ガラス(磁器)である。
なので、コンポジットレジンはプラスチック、セラミックは陶材または結晶質材料のジルコニアと捉えましょう。
では、実際にこの2つの材料を適応する際の判断基準になることを考えていきましょう。
比べてみよう!コンポジットレジンとセラミック
コンポジットレジン | 陶材 | ジルコニア | |
見た目、自然の美しさ | △ | ◎ | 〇 |
汚れの付きにくさ プラーク抑制効果 | × | ◎ | ◎ |
表面の変色・劣化しにくさ | × | ◎ | ◎ |
減りにくさ耐摩耗性 | × | ◎ | ◎ |
取り扱いの手間 扱いやすさ | ◎ | × | △ |
2次う蝕の危険性 | × | ◎ | ◎ |
費用 | ◎(保険適用できる場合が多い) | ×(自費になり数万~数十万) | ×(自費になり数万~数十万) |
◎:大変良い 〇:良い △:普通 ×:悪い
コンポジットレジンもまた、プラスチック製で加工がしやすく、保険適用であるというメリットがあり、多く使用されるメジャーな歯科材料です。各々特徴はあるものの、実際のところ、どちらの方が良いのでしょうか?
今回はセラミックとコンポジットレジンを分かりやすく比較して、解説していきます。
【セラミック材料の利点】
〇自然の白さと透明感
セラミック材料は、単に白いだけではなく、光沢感があります。そして光沢に加え、透明感もあり、自然な白さを再現できます。
天然の歯は、真っ白ではなく、光を透過し、透明感のある白さが特徴ですから、セラミックで作られた被せ物や詰め物は、天然の歯に似た自然な仕上がりを得られるようになります。
〇プラーク(歯垢)がつきにくい
セラミック材料の表面は、とても滑らかです。金歯や銀歯のような金属材料と異なり、静電気を帯びることもありません。このため、セラミック材料の表面には、虫歯や歯周病の原因となるプラーク(歯垢)がつきにくいです。プラークコントロールもしやすく、歯の健康という面から見てもプラスの効果があります。衛生的という点もセラミック材料の大きな利点の一つです。
〇変色・劣化がない
セラミック材料の白さは、時間が経っても変わりません。表面に着色汚れがついても、取り除けば元の白さに戻ります。このように、いつまでも自然な白さを保つことができるのもセラミックの非常に優れた特長です。
また、セラミックは陶器であり、昔の陶器の皿や花瓶が現存するように、セラミックはとても安定性の高い材料です。セラミックで作られた被せ物や詰め物も同様で、経年変化が少なく、長期にわたって劣化しにくいという特性を持っています。
〇金属アレルギーを起こさない
ジルコニア・オールセラミッククラウンやe-maxなどには金属材料が含まれていないので(陶材焼付金属冠には金属が含まれています)、歯科用の金属材料にアレルギーのある方でも、安心して使用が可能です。金属アレルギーとの関連性が指摘されている病気のある方も、セラミックなら心配ありません。
〇費用
セラミック材料は保険外診療のため、保険適用の歯科治療と比べると高額になります。治療費に関して、セラミック材料は欠点となります。
セラミックに比べコンポジットレジンの白さには光沢感が不足します。コンポジットレジンで治した歯の仕上がりには、ぱっと見きれいですが、限界があります。
セラミック材料で治すと、本物の歯と見分けがつかないほどの自然な白さが得られます。やはり仕上がりの良さという点では、コンポジットレジンはセラミック材料に遠く及びません。
〇変色・劣化
コンポジットレジンは、金属との境界で漏洩が起こったり水分が染み込んだり、紫外線が当たったりすることで、長期的には少しずつ変色していきます。
セラミック材料は、水分を受けても、紫外線が当たっても、白さや光沢感が変化することがありません。このように、コンポジットレジンは時間と共に変色しますが、セラミック材料は変色を起こすことなく、いつまでも当初の色合いを保てます。
〇プラークコントロール
コンポジットレジンはベースレジンとフィラーという材料を主成分としています。コンポジット(複合)という名称の由来は、このベースレジンとフィラーを組み合わせるところから来ています。
フィラーは粉末状の成分で、時間が経つと少しずつ表面から剥がれていきます。フィラーが取れた表面には、微細な凹凸が多数存在するので、ここにプラーク(歯垢)が入りこみ、増殖する温床となってしまいます。
さらに困ったことに、コンポジットレジンの凹凸は目に見えないサイズなので、この部分に入り込んだプラークを歯ブラシできれいにすることはできません。つまり、コンポジットレジンはプラークコントロールの点でとても不利なのです。
一方、セラミック材料は、強度もあり、安定性の高い材料なので凹凸は生じず、プラーク(歯垢)が増える温床になることはありません。
〇二次カリエスのリスク
二次カリエスとは、一度治した歯に再発した虫歯のことです。この二次カリエスの原因もプラーク(歯垢)です。
上述のとおり、コンポジットレジンの表面はプラークがつきやすいので、二次カリエスの発生リスクも高くなります。セラミック材料はプラークが付着しにくいので、二次カリエスの発生リスクは、コンポジットレジンより低く抑えられます。
〇費用
コンポジットレジンは保険診療の適用を受けています。このため、コンポジットレジンを使った詰め物や被せ物の実際に患者さんが支払う治療費は低く抑えられています。
一方、セラミック材料には保険診療が認められていませんので、セラミックを使用する治療は自費診療となり、保険診療よりも高額になります。
治療箇所や歯の状態によるものの、コンポジットレジンの場合は数千円単位~、セラミック材料の場合は数万円単位~となりますので、治療にかかるコストについては、コンポジットレジンの方がリーズナブルです。
費用が高くなるデメリットがりますが、自然で美しい白さに加え、変色や劣化もせず、虫歯にもなりにくいため、患者さんの歯の健康を総合的に考えると、セラミック材料のメリットが圧倒的に多いことは事実です。
ただし、コンポジットレジンが全く良くないというわけではありません。保険診療であることに加え、ある程度の見た目を獲得できるなど、メリットももちろんあります。