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■ 患者さんのお悩み
「左下奥のインプラントの歯ぐきが腫れて痛みがある」
このようなお悩みで来院されました。
■ 結論
左下6番相当部の重度インプラント周囲炎に
より、骨が大きく失われたインプラントを撤去し、
その後の周囲炎治療と清掃環境の改善により
隣のインプラントを残すことができました。
■ なぜこの状態になったのか
補綴専門医の分析
原因は複数ありました。
本症例では、まず構造的な問題として
インプラント同士が連結されており、
清掃が難しい環境であったことが
挙げられます。
また、骨が大きく失われていても、
連結されているため揺れが出にくく、
問題に気づきにくい状況でした。
さらに、お口全体の普段みがきの段階から
プラークコントロールに課題があり、
基本的なブラッシングの習得にも
時間を要する状態でした。
その結果、ご自身での清掃管理と専門的な
メインテナンスの両方が十分に機能しにくく、
より高度な清掃管理が求められる
インプラント周囲のケアが難しく
なっていました。
これらの条件が重なり、
インプラント周囲炎が
進行していました。
インプラント周囲炎では、骨が急速に
失われることがあります。
そのため、痛みが出にくく問題が起きても
気づきにくく、進行しやすいのが特徴です。
■ 治療前の状態
・左下奥歯インプラントに
メタルセラミッククラウンが
連結で装着されている
・歯ぐきの腫れ・発赤
・排膿あり
・押すと痛み(圧痛)あり
・レントゲンでインプラント体先端まで
大きな骨の消失を確認
連結されていたため
骨吸収が高度に進行していても
明らかな動揺が出にくい状態でした。
■ 治療のポイント
■① インプラント体の撤去
強固に連結されているため明らかな動揺は
ありませんでしたが、骨の喪失が
90%以上に及び、
感染のコントロールも困難な状況でした。
さらに隣接するインプラントの骨喪失にも
影響を及ぼしていたため、
早期の撤去が必要と判断しました。
■② 残存インプラントの周囲炎治療
・ブラキシズム等の悪習癖はない。
・喫煙・糖尿病などのリスク因子はない。
1)連結除去により残存インプラントの清掃環境が
改善したこと
2)不十分な口腔衛生状態の改善
以上の2つにスポットを当て
治療を計画した。
【成功のポイント】
徹底した口腔衛生指導
来院時のたびにブラッシングの状態を確認し
必要な修正を繰り返しました。
月2回の来院をお願いし、
インプラント周囲の清掃方法
についても繰り返し練習しました。
その結果、清掃状態の安定化が
得られました。
並行して以下の治療を行った
・器械的デブライドメント
ソフトチップを用いた
超音波スケーラーによる器械的清掃
・化学的除染
クロルヘキシジン
EDTA
による化学的洗浄
・レーザー治療
エルビウムヤグレーザーを用いた殺菌、
除染療法
これらの治療を5~8回繰り返しました。
インプラント撤去後、約10ヶ月治療と経過観察を繰り返し、
・骨の回復
・症状の消失
を確認しました。
■③ メインテナンス
インプラント周囲炎は完全に元通りに治すこと
が難しい場合が多く、長期的にコントロールして
いくことが重要です。
そのため当院では、炎症の鎮静化、骨吸収の進行
停止、清掃性の改善を目標として、継続して
メインテナンスを行っています。
プロフェッショナルクリーニング
(Professional cleaning)、ポケット測定、
エックス線検査、咬合診査を定期的に行い
再発予防に努めます。
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