第2章 睡眠とお口の関係(第1部)
睡眠と歯科はなぜ関係するのか
「睡眠のことなら内科や睡眠専門医
では?」と思われる方も多いかもし
れません。
しかし実は、睡眠とお口の健康には
深い関係があります。
私たちは眠っている間も、お口では
呼吸や嚥下、唾液の分泌など、生命を
支える重要な働きが続いています。
そのため、お口の状態が睡眠に影響
を与えることもあれば、睡眠の質
が、お口や顎の健康に影響を及ぼす
こともあります。
例えば、
・睡眠時無呼吸症候群(OSA)
・いびき
・口呼吸
・睡眠中の歯ぎしり・食いしばり
・起床時の顎の疲れや顎関節の痛み
・起床時の頭痛
・口腔乾燥(ドライマウス)
などは、睡眠とお口の健康が関係す
る代表的な例です。
睡眠中は、日中に使った筋肉を
はじめ、全身の組織が回復する
大切な時間でもあります。
例えば、楽器の演奏やスポーツ、
教師や営業職、アナウンサー、司
会者など顎や口の周囲を頻繁に
動かす方では、筋肉に大きな
負担がかかることがあります。
十分な睡眠がとれない状態が続く
と、その回復が不十分となり、
疲労感や違和感、痛みにつながる
ことがあります。
さらに、高齢になると、お口の機能
の低下と睡眠の質は互いに影響し合
うことが知られています。
近年では、舌の働きや口腔機能と睡
眠との関係についても研究が進めら
れています。
当院は睡眠専門医療機関ではありま
せんが、歯科医療の立場から、お口
の健康と睡眠との関わりについて分
かりやすくお伝えしていきたいと考
えています。
このシリーズでは、
・睡眠時無呼吸症候群(OSA)
・いびきと口呼吸
・歯ぎしり・食いしばり
・舌の位置や働き
・お口の機能と睡眠
・睡眠時無呼吸症候群に対する口腔
内装置(OA)
などについて、歯科の視点から順番
にご紹介していきます。
「睡眠」は脳や体を休める時間です
が、お口や顎は、眠っている間も重
要な役割を担っています。
睡眠中も、
・呼吸を続ける
・気道を保つ
・唾液を分泌する
・飲み込む(嚥下)
・舌を適切な位置に保つ
・顎や口の周囲の筋肉が気道を支え
る
など、多くの働きが休むことなく続
いています。
つまり、お口は単に「食べるための
器官」ではなく、睡眠中の呼吸や全
身の健康を支える重要な器官でもあ
るのです。
① 鼻呼吸が睡眠を支えています
本来、睡眠中の呼吸は鼻で行われる
ことが基本です。
しかし、睡眠中は全身の筋肉がリラッ
クスするため、気道を支える筋肉も緩み、
気道が狭くなりやすくなります。
その結果、
・舌が後方へ下がる
・軟口蓋がたるむ
・咽頭周囲の筋肉が緩む
ことで気道が狭くなります。
そのため、
・舌の位置や働き
・顎の大きさ
・歯並び
・鼻呼吸ができるか
など、お口や顎の状態は睡眠中の呼
吸に大きく影響します。
これらは、睡眠中に気道を保つうえ
で重要な要素です。
② 舌は睡眠中も重要な働きをして
います
近年特に注目されているのが舌で
す。
舌は
・食べる
・話す
だけではありません。
睡眠中には、
舌が前方で適切な位置を保つことで
気道が塞がるのを防ぐ
という重要な役割があります。
舌の筋力が低下すると、
舌が後方へ落ち込みやすくなり、
気道が狭くなる原因の一つになりま
す。
③ 顎の形も睡眠に関係します
顎が小さい方や、下顎が後方に位置
する方では、
舌が後ろへ押されやすく、
睡眠中の気道が狭くなりやすいこと
があります。
そのため、
睡眠時無呼吸症候群では
歯並びだけではなく、
顎顔面の形態も重要な評価項目にな
ります。
このように顎や歯並び、舌の状態まで
含めて評価できることは、歯科ならで
はの特徴です。
④ 筋肉の回復も睡眠の役割です
睡眠は、
筋肉を回復させる時間でもありま
す。
例えば、楽器の演奏やスポーツ、教師
や営業職、アナウンサー、司会者など、
顎や口の周囲の筋肉を繰り返し使う方
では、筋肉に大きな負担がかかること
があります。
十分な睡眠がとれない状態が続くと、こ
れらの筋肉の回復が不十分となり、疲労
感や違和感、痛みにつながることがあり
ます。
また、
睡眠中の歯ぎしりや食いしばりが加
わることで、さらに筋肉へ負担がか
かる場合もあります。
⑤ 睡眠は口腔環境にも影響します
睡眠中は唾液の分泌量が少なくなり
ます。
さらに、
口呼吸になると、
お口が乾燥しやすくなり、
・むし歯
・歯周病
・口臭
・口腔乾燥症
などのリスクが高くなることがあり
ます。
⑥ お口の問題も睡眠に影響します
大切なのは、睡眠がお口に影響するだ
けではなく、お口の状態も睡眠に影響
するということです。
例えば、
・顎関節の痛み
・咬み合わせの違和感
・歯の痛み
・入れ歯の不適合
・口腔乾燥
などによって、
眠りが浅くなることがあります。
つまり、
睡眠とお口は一方向ではなく、互いに
影響し合う関係なのです。
睡眠は、単に身体を休める時間ではあ
りません。
お口や顎も、眠っている間に呼吸を支え、
機能を維持し、回復しています。
だからこそ、睡眠とお口は切り離して
考えることはできません。
次回からは、それぞれのテーマについ
て歯科の視点から詳しくご紹介します。


