顎関節症(TMD:Temporomandibular Disorders)の治療に関するQ&A
顎関節症については、
「噛み合わせが悪いから?」
「歯ぎしりが原因?」
「マウスピースをすれば治る?」
など、さまざまな疑問を
お持ちの方がいらっしゃいます。
しかし現在、顎関節症は
一つの原因だけで説明できる
疾患ではなく、身体的・生物学的要因、
行動、心理社会的要因など、
複数の要因が関係する
「多因子性」の疾患として
考えられています。
ここでは、現在の顎関節症に対する
考え方をもとに、患者さんから
よくいただく疑問について
ご説明します。
Ⅰ.まず知っていただきたいこと
- 顎関節症とは何ですか?
- 顎関節症(TMD)とは、
顎関節や顎を動かす筋肉などに
生じる痛みや機能障害の総称です。
代表的な症状には、
顎の痛み、口の開けにくさ、
顎を動かしたときの音などがあります。
一つの病気を指す名称ではなく、
異なる病態を含んだ疾患群です。
- どのような症状がありますか?
- 代表的な症状には、
・顎や耳の前が痛い
・口が開けにくい
・口を開閉すると顎から音がする
・食事をすると顎が疲れる
・顎を動かす筋肉が痛い
などがあります。
頭痛などを伴うこともあります。
- 顎関節症は一つの病気なのですか?
- いいえ。
顎関節そのものに問題がある場合、
顎を動かす筋肉に痛みがある場合など、
さまざまな病態が含まれています。
また、複数の病態が同時に
存在することもあります。
- 顎関節症は珍しい病気ですか?
- 珍しいものではありません。
顎関節や咀嚼筋に症状を経験する方は
少なくありません。
ただし、症状があるすべての方に
積極的な治療が必要というわけでは
ありません。
- 顎関節症は自然に良くなることがありますか?
- はい。
顎関節症の中には、時間の経過とともに
症状が軽快するものが少なくありません。
一方で、症状が長期間続いたり、
繰り返したりする方もいます。
- 顎から音がします。治療が必要ですか?
- 音がするだけで、痛みや
口の開けにくさがなければ、
必ずしも治療が必要とは限りません。
顎関節の音は、症状のない方にも
みられます。
痛みや開口障害を伴う場合には、
一度状態を確認することを
お勧めします。
- 顎が痛ければ、すべて顎関節症ですか?
- いいえ。
歯の病気、神経の病気、頭痛、
耳鼻咽喉科領域の病気などでも、
顎やその周囲に痛みを感じることが
あります。
そのため、他の疾患との鑑別が
重要です。
- 片側だけ痛むこともありますか?
- あります。
片側だけに症状が現れる場合も、
両側に現れる場合もあります。
左右差だけから原因を
判断することはできません。
Ⅱ.顎関節症はなぜ起こるのでしょうか
- 顎関節症の原因は何ですか?
- 多くの顎関節症では、
「これが原因です」と一つに
特定することはできません。
現在では、身体的・生物学的要因、
行動、心理社会的要因など、
複数の要因が複雑に関係すると
考えられています。
- 「多因子性」とはどういう意味ですか?
- 一つの原因だけで病気が起こるのではなく、
さまざまな要因が組み合わさって、
発症や症状の持続に関係する
という意味です。
そして、どの要因がどの程度関係するかは
患者さんによって異なります。
- どのような要因が関係するのでしょうか?
- 例えば、
・顎関節や咀嚼筋などの状態
・外傷
・顎への負担となる行動
・痛みの感じ方や調節に関係する
生物学的な違い
・心理社会的な要因
・睡眠
・他の慢性的な痛み
などが関係する可能性があります。
すべてが一人の患者さんに
存在するわけではありません。
- 「生物心理社会モデル」とは何ですか?
- 痛みや病気を身体だけの問題として
考えるのではなく、
「生物学的な要因」
「心理的な要因」
「社会的な要因」
を含めて総合的に考える方法です。
特に慢性的な顎関節症を理解するうえで
重要な考え方です。
- 症状が始まった原因を見つければ治るのでしょうか?
- 必ずしもそうではありません。
症状が始まるきっかけとなった要因と、
その後も症状を長引かせている要因が
同じとは限らないからです。
そのため、「最初の原因」だけを
探すのではなく、現在の症状に
何が関係しているかを考えることが
重要です。
- 外傷が原因になることはありますか?
- あります。
顎や顔面への外傷など、
比較的明確なきっかけが存在する
TMDもあります。
- ストレスは顎関節症の原因ですか?
- ストレスだけで顎関節症になる、と
単純に考えることはできません。
ただし、ストレスや不安などの
心理社会的要因は、筋活動、行動、睡眠、
痛みの感じ方などを通じて
症状に関係することがあります。
これは「痛みが気持ちの問題」
という意味ではありません。
- 睡眠と顎関節症は関係しますか?
- 痛みを伴う顎関節症と睡眠の問題には
関連があることが報告されています。
慢性的な痛みが睡眠に影響したり、
睡眠の問題が痛みの感じ方に
影響したりする可能性があります。
両者を一方向の因果関係だけで
考えないことが重要です。
- 他の身体の痛みと関係することがありますか?
- あります。
慢性的なTMDでは、頭痛や首・背中など
他の部位の痛み、その他の慢性疼痛が
併存することがあります。
そのため、顎だけを見るのではなく、
全身の症状を確認することが
重要な場合があります。
Ⅲ.噛み合わせ・歯ぎしり・食いしばりとの関係
- 噛み合わせが悪いと顎関節症になりますか?
- 一般的な噛み合わせの状態そのものが、
顎関節症の主な原因になるという
考え方は、現在のエビデンスでは
支持されていません。
「理想的な噛み合わせではない
=顎関節症になる」
ということではありません。
- 歯並びが悪いと顎関節症になりますか?
- 歯並びが理想的でないことを、
それだけで顎関節症の原因と
考えることは適切ではありません。
顎関節症を予防・治療することだけを
目的として、歯を削ったり、
歯並びや噛み合わせを変更したりする
治療を行うことは適切ではありません。
- 顎関節症を治すために歯を削る必要がありますか?
- 顎関節症を治すことだけを目的として、
歯を削って噛み合わせを調整する
治療は行いません。
歯を削ると処置前と同じ状態には
戻すことができないため、
まず保存的・可逆的な方法から
治療を行います。
- 被せ物を作り直せば顎関節症は治りますか?
- 顎関節症を治すことだけを目的として、
被せ物を作り直して噛み合わせを
変更する治療は行いません。
ただし、歯科治療によって作られた
被せ物などが明らかに高い、
特定の歯だけが異常に早く接触するなど、
歯科治療によって生じた明確な問題が
認められる場合には個別に対応します。
- 顎関節症によって噛み合わせが変わることもありますか?
- あります。
顎関節や咀嚼筋の状態によって
顎の位置や動きが変化し、
その結果として噛み合わせが以前と
違って感じられる場合があります。
そのため、
「噛み合わせが変わった
=噛み合わせが顎関節症の原因」
とは限りません。
顎関節や筋肉の状態が改善することで、
顎の位置や噛み合わせも元の状態へ
戻っていく場合があります。
- 歯ぎしりは顎関節症の原因ですか?
- 歯ぎしりとTMDには関連が
報告されていますが、
「歯ぎしりをしているからTMDになる」
という単純な因果関係ではありません。
患者さんによっては、症状に関係する
要因の一つとして評価します。
- 食いしばりは関係しますか?
- 日中に長時間歯を接触させる行動などが、
一部の患者さんの筋痛や顎の疲労に
関係する可能性があります。
ただし、食いしばりだけを
すべてのTMDの原因と考えることは
できません。
- 歯ぎしりと食いしばりは同じですか?
- 同じではありません。
現在、ブラキシズムは
睡眠中にみられるものと、
覚醒時にみられるものを分けて考えます。
評価や対応もそれぞれ異なります。
- 歯がすり減っていれば、現在も歯ぎしりをしているということですか?
- 必ずしもそうとは限りません。
歯の摩耗は過去から蓄積した結果でもあり、
摩耗だけから現在のブラキシズムの
程度を判断することはできません。
Ⅳ.診察・診断・検査について
- 顎関節症はどのように診断しますか?
- まず症状の経過を詳しく伺います。
そのうえで、痛みの場所、顎の動き、
開口量、顎関節や咀嚼筋の状態などを
診察します。
必要に応じて画像検査などを行います。
- 問診はなぜ重要なのですか?
- TMDでは、
いつから、
どのような時に、
どこが、
どのように痛むのか
という病歴が非常に重要だからです。
また、症状の経過や日常生活への影響も、
診断・治療方針を考える大切な情報です。
- 顎の筋肉も診察しますか?
- はい。
咬筋や側頭筋など、
顎を動かす筋肉の痛みや圧痛などを
確認します。
- 口がどのくらい開くかも調べますか?
- 調べます。
単に開口量だけでなく、
開けたときの痛み、顎の動き方、
左右への偏位なども確認します。
- レントゲンで顎関節症は分かりますか?
- 通常のX線検査では、
主に骨の状態を評価します。
TMDのすべてをレントゲンだけで
診断することはできません。
- CTは必要ですか?
- すべての患者さんに必要ではありません。
顎関節を構成する骨の変化などを
詳しく確認する必要がある場合に
検討します。
- MRIは必要ですか?
- すべての患者さんに必要ではありません。
関節円板や関節内部の状態など、
軟組織を詳しく確認する必要がある場合に
有用です。
必要と判断した場合には、
MRI検査が可能な専門医療機関へ
ご紹介します。
- 噛み合わせも診ますか?
- はい。
歯科診療として、現在の歯の接触状態や
噛み合わせも確認します。
ただし、
「悪い噛み合わせを探して、
それを顎関節症の原因とする」
ために診るわけではありません。
顎関節や筋肉の状態によって
噛み合わせが変化している場合もあるため、
顎全体の状態の一つとして評価します。
- 心理的な状態についても確認することがありますか?
- 慢性的な痛みでは、
痛みによる生活への影響、
不安や抑うつなどの心理社会的側面を
確認することがあります。
現在のTMD診断では、身体的な評価だけでなく、
こうした側面を評価することも
重要とされています。
- 頭痛についても確認しますか?
- はい。
TMDに関連する頭痛もありますが、
頭痛にはさまざまな原因があります。
必要に応じて医科での診察を
お勧めします。
- 耳の症状がある場合も歯科でよいですか?
- 顎関節周囲と耳は近いため、
TMD患者さんが耳周囲の違和感を
訴えることがあります。
ただし、耳そのものの疾患を
除外する必要がある場合には、
耳鼻咽喉科への受診が必要です。
- 突然口が開かなくなりました。受診した方がよいですか?
- はい。
急に開口量が低下した場合には、
関節円板の問題などさまざまな状態が
考えられるため、診察を受けることを
お勧めします。
- 自分で顎関節症と診断できますか?
- 正確な診断は困難です。
歯の病気、神経痛、頭痛、
耳鼻咽喉科領域の疾患など、
TMDに似た症状を示す病気があるためです。
Ⅴ.治療について
- 顎関節症の治療目標は何ですか?
- 「理想的な噛み合わせを作ること」
ではありません。
痛みを軽減し、
口を開ける・食べる・話すなどの
機能を回復し、日常生活への支障を
減らすことが大きな目標です。
- 治療の基本的な考え方は何ですか?
- 多くの場合、まず保存的・可逆的な
方法から治療を始めます。
患者さん自身によるセルフケア、
運動療法、必要に応じた薬物療法、
口腔内装置などを病態に応じて
選択します。
当院では、症状によって
レーザー治療を補助的な選択肢として
検討する場合もあります。
- 「保存的・可逆的治療」とは何ですか?
- 「可逆的治療」とは、
歯を削るなど、処置前と同じ状態には
戻すことのできない治療を避けて
行う治療です。
例えば、
生活指導、
セルフケア、
運動療法、
薬物療法、
適切に管理された口腔内装置
などがあります。
顎関節や筋肉の状態が改善することで、
顎の位置や噛み合わせが変化することは
あります。
これは歯を削るなどして
噛み合わせそのものを作り変えることとは
異なります。
- セルフケアだけで改善することもありますか?
- あります。
症状や病態によっては、
顎への負担となっている行動を見直したり、
適切な運動を行ったりすることで
改善することがあります。
- 運動療法は有効ですか?
- 病態に応じた顎の運動療法は、
TMD治療の重要な選択肢の一つです。
開口訓練などを行うことがありますが、
どのような運動が適切かは
病態によって異なります。
強く動かせばよいというものでは
ありません。
- 顎のマッサージは有効ですか?
- 筋肉に由来する痛みなどでは、
適切な徒手療法が役立つ場合があります。
ただし、強く押したり揉んだりすれば
よいわけではありません。
- レーザー治療を行うことはありますか?
- 当院では、症状や病態によって、
Er:YAGレーザー
(アーウィン アドベール)を
補助的な治療の選択肢として
検討する場合があります。
主に顎周囲の疼痛や筋症状などに対して
使用を検討しますが、レーザーだけで
すべての顎関節症を治すものではありません。
生活指導、運動療法、薬物療法、
口腔内装置などと同様に、
患者さんの状態を評価したうえで
選択する治療法の一つと考えています。
- レーザー治療を受ければマウスピースや運動療法は必要ありませんか?
- そうとは限りません。
顎関節症は病態や関係する要因が
患者さんごとに異なります。
そのため、レーザー治療だけで
対応するのではなく、必要に応じて
生活指導、運動療法、薬物療法、
口腔内装置などを組み合わせます。
- レーザー治療の効果は確立していますか?
- レーザーを用いた疼痛緩和などについては
研究が行われています。
しかし、レーザーの種類、照射条件、
対象となる病態などが研究によって異なり、
すべてのTMDに対する標準治療として
確立しているわけではありません。
そのため当院でも、効果を断定するのではなく、
症状や病態を確認しながら
補助的な選択肢として慎重に使用します。
- 痛み止めは使いますか?
- 急性の疼痛などでは
鎮痛薬を使用することがあります。
薬物療法は症状や全身状態を
確認したうえで選択します。
- 顎関節症に特効薬はありますか?
- すべてのTMDを根本的に治す
一つの薬があるわけではありません。
病態や症状に応じて
薬物療法を使用します。
- 手術が必要ですか?
- 多くのTMDでは必要ありません。
保存的治療で改善しない
特定の関節疾患などでは、
専門医療機関で関節への処置や
手術が検討されることがあります。
- 治療期間はどのくらいですか?
- 病態や症状の期間によって異なります。
当院で行う初期治療では、
おおむね1~3か月を一つの目安として、
症状や機能が改善しているかを評価します。
改善がみられない場合には、
同じ治療を漫然と続けるのではなく、
診断や治療方針を再検討します。
- 1~3か月治療しても改善しない場合はどうしますか?
- 適切な初期治療を行っても
改善がみられない場合には、
診断そのものを再検討することが重要です。
顎やその周囲の痛み、開口障害などには、
一般的なTMDとは異なる病気が
隠れている場合があります。
頻度は高くありませんが、
腫瘍などを含めた他の疾患との
鑑別が必要になることもあります。
そのため、必要と判断した場合には、
治療をいたずらに長期化させず、
大学病院など詳しい検査・診断が可能な
専門医療機関へご紹介します。
Ⅵ.マウスピース(スプリント)について
- 顎関節症にはマウスピースが必要ですか?
- すべての患者さんに
必要なわけではありません。
スプリントはTMD治療の選択肢の一つであり、
症状や病態を評価して適応を判断します。
- スプリントを入れれば顎関節症は治りますか?
- スプリントだけですべてのTMDが
治るわけではありません。
TMDは多因子性であるため、
必要に応じてセルフケアや運動療法などと
組み合わせて対応します。
- スプリントにはどのような目的がありますか?
- 症例に応じて、顎関節や咀嚼筋への
負担を管理したり、症状を軽減したりする
目的で使用することがあります。
また、歯ぎしりなどによる歯の摩耗や破折、
被せ物などの補綴物への負担を軽減する
目的で使用することもあります。
インプラント治療を受けている方では、
上部構造だけでなく、インプラントや
周囲組織に加わる過大な力を管理する
という観点から使用を検討する場合があります。
ただし、目的や適応は患者さんによって
異なります。
- スプリントで噛み合わせを変えるのですか?
- TMDの保存的治療として使用する
スプリントは、歯を削って噛み合わせを
作り変える治療とは異なります。
ただし、口腔内装置の種類や使用方法によっては、
歯や噛み合わせに好ましくない変化が
生じる可能性があります。
そのため、使用中も症状や歯の接触状態などを
確認し、必要に応じて調整します。
- 市販のマウスピースでもよいですか?
- 症状がある場合には、
自己判断で長期間使用することは
お勧めしません。
口腔内の状態や病態を確認したうえで、
必要性を判断することが大切です。
- スプリントを長期間使用してもよいですか?
- 必要性を定期的に評価することが
重要です。
長期間漫然と使用するのではなく、
症状、歯、顎関節、噛み合わせなどの
状態を確認しながら、
継続の必要性を判断します。
- スプリントを使って痛くなったらどうしますか?
- 使用を中止し、担当の歯科医師に
相談してください。
装置の調整だけでなく、
診断や治療方針そのものを
再評価する必要がある場合があります。
Ⅶ.日常生活・セルフケアについて
- 痛みが強い時に硬いものを食べてもよいですか?
- 急性期など、顎を動かすと
痛みが強い時には、一時的に硬い食品や
長時間の咀嚼を避けることで
負担を減らせる場合があります。
症状が改善したら、必要以上に
長期間制限する必要はありません。
- ガムは控えた方がよいですか?
- 顎に痛みがある時期には、
長時間ガムを噛み続けることが
症状を増悪させる場合があります。
そのため、控えることがあります。
- 日中の食いしばりに気づいたらどうすればよいですか?
- 必要のない時には上下の歯を
接触させ続けず、顎をリラックスさせる
ことを意識します。
ただし、過度に「食いしばっていないか」と
監視し続ける必要はありません。
- 頬杖や寝る姿勢は必ず直す必要がありますか?
- 特定の姿勢だけをTMDの原因と
決めつけることはできません。
ただし、自分で明らかに症状が増悪すると
感じる姿勢や行動があれば、
一時的に避けることは合理的です。
- 姿勢を改善すれば顎関節症は治りますか?
- 姿勢だけをTMDの原因と考えることはできず、
姿勢を変えればTMDが治ると
断定することもできません。
患者さんごとの症状や身体的要因の
一つとして評価します。
- 温めるのと冷やすのはどちらがよいですか?
- 病態や症状によって異なります。
温熱や冷却が症状の軽減に
利用されることがありますが、
すべての患者さんに同じ方法が
適しているわけではありません。
- 自分で顎を強くストレッチしてもよいですか?
- 自己判断で強い力を加えることは
お勧めしません。
病態に合わない運動によって
症状が悪化することもあるため、
必要な場合には適切な方法を
ご説明します。
Ⅷ.慢性化した症状・専門医療機関との連携
- 何か月も顎が痛いのですが、顎関節が壊れているのでしょうか?
- 痛みの強さと、顎関節の組織的な
変化の程度が必ずしも一致するわけでは
ありません。
慢性疼痛では、局所の状態だけでなく、
痛みを感じたり調節したりする仕組み、
睡眠、心理社会的要因なども
関係することがあります。
- どのような場合に専門医療機関を紹介しますか?
- 診断が難しい場合、
強い開口障害が続く場合、
適切な初期治療を行っても
改善しない場合などです。
また、画像検査や専門的な関節治療が
必要な場合、あるいはTMD以外の疾患が
疑われる場合なども含まれます。
また、初診時の診察から当院で治療を
開始するより専門的な評価を先に行うことが
適切と判断した場合には、
治療を開始する前に専門医療機関を
ご紹介することがあります。
Ⅸ.顎関節症と補綴治療
- 顎関節症がある場合、被せ物や入れ歯の治療はできますか?
- できますが、症状や治療内容によっては
慎重に進める必要があります。
被せ物、ブリッジ、入れ歯などによって
噛み合わせや顎の位置が大きく変化する
可能性がある場合には、まず、
・顎の痛み
・開口量
・顎の動き
・噛み合わせ
などが安定しているかを確認します。
必要な場合には、最終的な補綴物を作る前に
仮の補綴物などを使用して
経過を観察します。
ここで大切なのは、
「顎関節症を治すために
噛み合わせを変えること」
と、
「被せ物や入れ歯などの治療を
安全に進めるために、
顎関節や噛み合わせの状態を確認すること」
は別の話だということです。
当院では、顎関節症があるから
噛み合わせを作り変えるのではなく、
補綴治療によって現在安定している
顎関節や筋肉の状態を崩さないよう、
必要に応じて確認しながら
治療を進めます。
- 顎関節症の治療で最も大切なことは何ですか?
- 「原因を一つに決めつけないこと」
だと考えています。
顎関節症は患者さんによって
病態も、症状に関係する要因も異なります。
そのため、
「噛み合わせが悪いから」
「歯ぎしりをしているから」
「ストレスがあるから」
と、一つの要因だけですべてを
説明するのではなく、
顎関節、
咀嚼筋、
顎の動き、
行動、
睡眠、
心理社会的な背景、
そして必要に応じて噛み合わせなどを
総合的に評価します。
治療では、歯を削るなど、
処置前と同じ状態には戻すことのできない
治療を最初から行うのではなく、
まず保存的・可逆的な方法から始めます。
そして治療への反応を確認しながら
次の対応を考えます。
改善がみられない場合や、
一般的な顎関節症とは異なる状態が
疑われる場合には、
治療を漫然と続けず、
適切な専門医療機関へつなげることも
大切な治療の一部だと考えています。


